非高度集中治療室におけるウイルス性出血熱伝播のリスク管理:スコットランドでのクリミア・コンゴ出血熱症例から得た経験★★
Managing the risk of viral haemorrhagic fever transmission in a non-high-level intensive care unit:experiences from a case of Crimean-Congo haemorrhagic fever in Scotland
K.M. Roy*, S. Ahmed, T. Inkster, A. Smith, G. Penrice on behalf of the Incident Management Team
*Health Protection Scotland, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 304-308
背景
スコットランドでは 2012年、クリミア・コンゴ出血熱症の輸入例を経験した。
目的
本症例に対する公衆衛生の反応および 2 次伝播を防止するために取られた感染対策について検討すること。
方法
本症例の確定に続いて、以下の確実な実施を目的として緊急対策チームが招集された:(1)本症例に接触、あるいは血液・体液の曝露を受けた者全員の適切な評価および追跡調査、(2)治療に使用した器具、採取した検体、および環境の適切な消毒ないし処理。
結果
接触者の調査によって、追跡調査およびモニタリングを要する者 19 人を特定した。2 次感染例は発生しなかった。診断前に採取した検体を特定するのは非常に難しいことが判明した。大半の検体が追跡調査され、一時的に鋭利器材廃棄容器に保管された後、焼却された。少数の検体は回収できず、おそらく通常の院内廃棄のシステムによって廃棄されたと思われる。一方、生化学検査装置および血液検査装置は製造元の説明書に従って除染し、その廃液は下水として廃棄した。本症例のマットレス、血圧計、およびパルスオキシメータのプローブは焼却した。病室など患者環境の除染は国内の専門家のガイダンスに従って行った。
結論
ウイルス性出血熱(VHF)例の管理に関して、当時利用可能であった英国のガイドラインを参照したところ、2 次伝播のリスクを下げる方法について情報を得ることができた。しかしながら、高度でない隔離環境でVHF 患者を管理しなければならない状況での、様々な感染制御上の現実問題に直面した。国内の専門家と緊急対策チームとの緊密な連絡が、新たに出現する問題に対して適切に対応する鍵となった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
監訳者コメント:本論文は、VHF 患者を実際に経験したスコットランドの病院の初動動作とリスクアセスメント・感染対策を具体的に述べたものである。ロンドンの専門病院に移送するまでの数日間が臨場感をもって述べられている。わが国で VHF 疑い患者が発生した場合、それも同様の施設で発生した場合の対応について、参考になるに違いないと思われる。一読をお勧めする。
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