中国・北京における医療関連感染の点有病率調査:2014 年の調査と解析
Point-prevalence survey of healthcare-associated infections in Beijing, China: a survey and analysis in 2014
J.Y. Liu*, Y.H. Wu, , M. Cai, C.L. Zhou
*Beijing Hospital, Beijing, China
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 271-279
背景
点有病率調査から感染制御の優先順位を決定することができる。
目的
2014 年 5 月、Beijing Nosocomial Infection Control and Quality Improvement Centre は、北京にある 124 の急性期病院を対象とする点有病率調査を組織した。中国の特定地域にある 2 次および 3 次急性期病院における医療関連感染症(HCAI)点有病率に関する調査結果と、点有病率に影響を及ぼす因子を分析し、多種多様な病院で HCAI のモニタリングを行う根拠および資料とすること。
方法
感染管理担当者により実施された疫学的横断調査に基づき、症例を検討し、ベッドサイドでの調査を実施することにより HCAI 点有病率を検討した。
結果
全体で 124 の病院および患者 61,990例を調査し、患者 1,294 例(2.1%)に HCAI 1,389 件(2.2%)が診断された。呼吸器感染症が最も多い HCAI(54.4%、51.7 ~ 56.9%)で、次いで尿路感染症(15.0%、13.2 ~ 16.9%)、消化管感染症(7.7%、6.3 ~ 9.1%)、手術部位感染症(6.3%、5.1 ~ 7.6%)、血流感染症(5.5%、4.3 ~ 6.8%)であった。今回の調査の 3 大病原菌は、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)、大腸菌(Escherichia coli)であった。中心静脈カテーテル挿入、導尿、人工呼吸の実施率は、それぞれ 9.9%、12.4%、3.8%であった。全体で、患者の 23.7%が、調査日またはそれ以前に手術を受けた。HCAI が認められた患者の割合は、集中治療室 14.5%、内科 2.3%、外科 2%であった。下痢が評価例の 0.8%で認められたが、中国ではクロストリジウム・ディフシル(Clostridium difficile)の検査はルーチンには利用できない。
結論
限られた人材およびリソースの地域では、HCAI のリスク因子および疾患負担を明らかにするために、総合的モニタリングの代わりとして HCAI 点有病率の定期調査を実施可能である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
PPS(Point prevalence survey、点有病率調査)は比較的労力が少なく、安価に行えるサーベイランスの手法である。近年では抗菌薬の使用状況のサーベイランスなどにも用いられている。1 つの医療施設で経時的に、あるいはあるタイミングで地域で横断的にサーベイランスを行う時に今後はさらに注目される手法であろう。
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