入院患者における初発および再発性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症の経済的負担の比較:前向きコホート研究★

2016.07.13

Economic burden of primary compared with recurrent Clostridium difficile infection in hospitalized patients: a prospective cohort study


D.N. Shah*, S.L. Aitken, L.F. Barragan, S. Bozorgui, S. Goddu, M.E. Navarro, Y. Xie, H.L. DuPont, K.W. Garey
*University of Houston College of Pharmacy, USA
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 286-289
背景
再発性クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)にかかる追加の医療費を検討した研究はこれまでほとんどない。
目的
初発 CDI のみの入院患者における CDI の入院治療費および入院期間を定量化し、再発性 CDI に罹患した患者と比較すること。
方法
本研究は、初発 CDI と診断された成人入院患者を対象とした前向き観察コホート研究であり、3 か月間の追跡調査によって再発性 CDI エピソードを評価した。合計入院期間、CDI に起因する入院期間、およびそれぞれの入院費を、再発性 CDI エピソードが 1 件以上発生した患者と発生しなかった患者とで比較した。
結果
全体で、62 ± 17 歳(男性 42%)の初発 CDI 入院患者 540 例が組み込まれた。そのうち 95 例(18%)に 101 件の再発性 CDI エピソードが発生した。CDI に起因する入院期間の中央値(四分位範囲)および費用(米ドル)は、初発 CDI のみの患者でそれぞれ 7(4 ~ 13)日および 13,168(7,525 ~ 24,456)米ドルであった。これに対し、再発性 CDI 患者ではそれぞれ 15(8 ~ 25)日および 28,218(15,050 ~ 47,030)米ドルと増加した(それぞれP < 0.0001)。合計入院期間の中央値および費用は、初発 CDI のみの患者でそれぞれ 11(6 ~ 22)日および 20,693(11,287 ~ 41,386)米ドルであった。これに対し、再発性 CDI 患者ではそれぞれ 24(11 ~ 48)日および 45,148(20,693 ~ 82,772)米ドルと増加した(それぞれP < 0.0001)。入院期間中の薬物治療費の中央値は、初発 CDI のみの患者(445 例)で 60(23 ~ 200)米ドル、再発性 CDI 患者で 140(30 ~ 260)米ドルであった(P = 0.0013)。
結論
本研究で、CDI 患者には CDI に起因する有意な医療経済的負担が生じることが示された。経済的コストおよび医療負担は、再発性 CDI 患者で有意に増加した。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
米国での前向きコホート研究である。CDI の初発と再発では、入院期間、医療費、薬物治療費のすべてにおいて、約 2 〜 3 倍の差が認められている。再発率は一般的に 25 〜 33%とされており、初発例の医療費は、再発例に比較すればはるかに低くおさえられるため、いかにして再発をさせないかが、医療経済的な課題としてあげられる。フィダキソミシンや便移植は再発率を大きく改善するが、その費用ははるかに高いことは明らかであるが、今後総合的な医療経済を考慮して、再発率の低い治療について「費用対効果」を検討すべきであろう。

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