3 次病院における石けんの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)汚染:患者への影響のエビデンスなし
Hand soap contamination by Pseudomonas aeruginosa in a tertiary care hospital:no evidence of impact on patients
D.S. Blanc*, B. Gomes Magalhaes, M. Abdelbary, G. Prod’hom, G. Greub, J.B. Wasserfallen, P. Genoud, G. Zanetti, L. Senn
*Lausanne University Hospital, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 63-67
背景
集中治療室における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の環境調査の際に、液体石けんが本病原菌に高度に汚染されていることが明らかになった(最大 8 × 105 cfu/g)。過去 5 か月間にわたり用いられており、おそらく製造時に汚染されたものであった。
目的
全ゲノムシークエンシングと組み合わせた分子タイピングによる疫学調査を実施し、この汚染の患者への負担を検討すること。
方法
臨床検体から分離された緑膿菌株を double locus sequence typing(DLST 法)により分析し、石けんから回収された分離株と比較した。石けんに認められた菌と同じ遺伝子型の菌に感染していた患者のカルテを調査した。遺伝子型が同一の石けんと患者の分離株について全ゲノムシークエンシングを実施した。
結果
緑膿菌分離株(776 株)が患者 382 例中 358 例(93.7%)から得られた。石けんで認められた遺伝子型に感染していた患者は 3 例(0.8%)のみであった。疫学調査から、最初の患者は石けんに曝露されておらず、2 番目の患者は曝露された可能性があり、3 番目の患者は確かに曝露されていた。全ゲノムシークエンシングから、患者と石けんの分離株の間に主要部分の一塩基多型の違いが多数認められた。石けんと患者の分離株に密接な遺伝的関連性は認められず、伝播の仮説は除外された。
結論
石けんが高度に汚染されていたにもかかわらず、DLST と全ゲノムシークエンシングの組み合わせ調査では患者への影響は認められなかった。15 年を超えて手指衛生にアルコール製の液剤が用いられてきたことがおそらく主な理由である。とはいえ、このような汚染は、排除されるべき病原菌の推定上のリザーバが病院環境に存在することを示す。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
病院環境における石けんの緑膿菌などによる汚染は長らく指摘されてきた。本研究は石けんから検出された緑膿菌と患者および患者環境から検出された緑膿菌が類似していないことから、石けんの緑膿菌汚染による患者および患者環境への影響は限定的であると報告したものである(ただし、だから汚染しても良いのだとは結論づけていない)。
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