軟性内視鏡洗浄の検証に用いる試験用汚染物質と比較した臨床分泌物の物理的特性および組成特性★

2016.05.23

Physical and composition characteristics of clinical secretions compared with test soils used for validation of flexible endoscope cleaning


M.J. Alfa*, N. Olson
*St. Boniface Research Centre, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 83-88
目的
シミュレーション使用においていずれの試験用汚染物質が、最悪の場合の有機物レベルおよび臨床分泌物の粘度に一致し粘着特性が最も高いのかを明らかにすること。
方法
蛋白質、炭水化物、ヘモグロビンの各レベル、内視鏡に付着する臨床分泌物の振動式測定による粘度を ATS、ATS2015、Edinburgh、Edinburgh-M(修正)、Miles、10%血清、凝固全血などの試験用汚染物質と比較した。粘着性試験には ASTM D3359 規格を用いた。1 チャンネル挿管用軟性内視鏡をシミュレーション使用した後、その洗浄を試験した。
結果
蛋白質、炭水化物、ヘモグロビンの最悪レベルはそれぞれ 219,828 μg/mL、9,296 μg/mL、9,562 μg/mL、臨床試料の粘度は6 cPであった。全血、ATS2015、Edinburgh-M はピペットで採取可能で、粘度はそれぞれ 3.4 cP、9.0 cP、11.9 cPであった。ATS2015 および Edinburgh-M が最悪の場合の臨床パラメータと最もよく一致したが、ATS が除去率 7%で粘着性がもっとも高かった(Edinburgh-M は36.7%)。Edinburgh-M および ATS2015 は、汚染状態および挿管用軟性内視鏡の表面および内腔からの除去特性が同様であることが示された。
結論
評価した試験用汚染物質のうち、ATS2015 および Edinburgh-M は、組成と粘度が最悪の場合の臨床試料に最もよく一致していたため、内視鏡のシミュレーション使用に適した選択であることが明らかになった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
再使用する医療器具の再生には、適切な滅菌消毒工程の前に効果的な洗浄後が必須であることは周知の事実であるが、洗浄の保証の重要性が近年認識されるようになった。米国食品薬品局(FDA)は 2015 年に医療器具の再生に関するガイドラインを作成し、その中でメーカーに対して模擬汚染物質を使用しての洗浄効果の検討を要求している。本ガイドラインでは、各医療器具毎に医療現場で使用される際の最悪の汚染状態を想定した模擬汚染物を選択するよう推奨している。しかしながら適切な試験用模擬汚染物質の選択に関する検討は十分ではない。本論文では、いくつかの市販されている模擬汚染物質を評価し、内腔を有する軟性内視鏡においては、AST2015 と Edinburh-M の 2 種類が洗浄評価のための模擬汚染物質として適切であろうと結論づけている。参考までにわが国では、日本医療機器学会が 2012 年に「洗浄評価判定ガイドライン」を出しているが、模擬汚染物質の記載はない。

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*University of São Paulo School of Medicine Hospital das Clínicas, Brazil

Journal of Hospital Infection (2021) 115, 83-92


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