超多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)による院内アウトブレイクの、毎日のクロルヘキシジン浴を含む多面的介入を用いた管理
Management of a hospital outbreak of extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii using a multimodal intervention including daily chlorhexidine baths
A.P. Gray*, R. Allard, R. Par é, T. Tannenbaum, B. Lefebvre, S. L évesque, M. Mulvey, L. Maalouf, S. Perna, Y. Longtin
*McGill University, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 29-34
背景
超多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Extensively drug-resistant Acinetobacter baumannii;XDR-Ab)は、医療関連感染のますます重要な原因となっている。医療関連アウトブレイクの最適な制御策は、依然として明らかにされていない。
目的
2012 年 3 月から 2014 年 1 月にかけて大規模病院の複数の病棟で発生した XDR-Ab アウトブレイクの疫学と制御について記述すること。
方法
症例発見は、直腸、鼠径部、咽喉、鼻、創傷、医原性侵入路、およびカテーテル留置部位などのスクリーニングにより行った。抗菌薬感受性は、ディスク拡散法および E テストにより評価した。耐性遺伝子を PCR 法により検出した。クローン状態をパルスフィールド・ゲル電気泳動により評価した。症例のカルテをレビューし、侵襲性感染症のリスクを同定した。制御策には、症例の隔離およびコホーティング、手指衛生の強化、環境汚染除去、およびあらかじめグルコン酸クロルヘキシジンに浸漬したワイプを用いた毎日の入浴による感染源管理などを行った。
結果
患者 29 例で XDR-Ab の単一のクローン株による保菌または感染が認められた。5 例が XDR-Ab 菌血症で死亡した。伝播は主として 2 病棟で発生した。スクリーニングを行ったすべての解剖学的部位で保菌が検出され、57%(28 例中 16 例)のみが直腸の保菌者であった。進行悪性疾患は菌血症のリスク因子であった(相対リスク 5.8、95%信頼区間 1.2 ~ 27.0)。多面的制御策の実施後に伝播は終結した。続く 20 か月間に新たな院内感染症例は発生しなかった。
結論
本研究は、保菌を診断し、XDR-Ab 菌血症のリスク因子を同定するために、複数の解剖学的部位をスクリーニングする必要性を強調している。症例に対する毎日のクロルヘキシジン浴を含めた多面的介入後、速やかにアウトブレイクが終結した。病院は、将来 XDR-Ab アウトブレイクの管理時には同様の介入を検討すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
アウトブレイクの際、監視培養のサンプルをどこからとるかに迷うが、この論文では、鼠径部と鼻は、感度が良くないと言うことで途中で対象からはずれていた。MRSA 対応で評価されることの多いクロルヘキシジン浴であるが、本論文では、アシネトバクターアウトブレイクでの対応においても意義があったのでは、と考えられていた。医療施設でのアウトブレイク発生時は、対応に追われながらのデータ収集となり、定義や対策もその都度修正されていくことも多く、終息後に論文にまとめることは難しいが、それでも、記録に残し公表していくことの重要性を感じた。
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