メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に汚染された環境表面のナノサイズ二酸化チタンによる光触媒殺菌消毒
Nano-TiO2-based photocatalytic disinfection of environmental surfaces contaminated by meticillin-resistant Staphylococcus aureus
S. Petti*, G.A. Messano
*Sapienza University, Italy
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 78-82
背景
従来の清掃消毒法は、病院表面のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)汚染を完全に除去するには不十分である。ナノサイズ二酸化チタンによる光触媒殺菌など、他の方法が役立つ可能性がある。
目的
自然に近い状態のポリ塩化ビニル表面に対する光触媒殺菌の抗 MRSA 活性を評価すること。
方法
2つの同一のポリ塩化ビニル表面を用い、その一方にナノサイズ二酸化チタンを取り入れた。ミスト噴霧装置を用いて、各表面を入院患者から分離された MRSA で汚染し、保菌者が原因となる環境汚染の状態をシミュレーションした。MRSA 細胞密度は、Rodac プレートを用いて汚染前から汚染後180分まで評価した。MRSA 密度と MRSA 密度低下の対数について、試験表面と対照表面の差をパラメトリックおよびノンパラメトリック統計検定により評価した。5 株の試験を各 5 回実施した。
結果
汚染後 45 分に、最大の MRSA 密度中央値が認められた(対照表面および試験表面についてそれぞれ 46.3 および 43.1 コロニー形成単位[CFU]/cm2)。汚染後 180 分の MRSA 密度中央値は、対照表面および試験表面でそれぞれ 10.1 および 0.7 cfu/cm2 であった(P < 0.01)。光触媒殺菌によるMRSA密度低下の対数は、1.16 log cfu/cm2であり、ベースラインの MRSA 汚染の 93%低下に相当した。
結論
試験間に清掃消毒があるにもかかわらず、消毒作用は 25 回の試験機会全体にわたり一定であった。光触媒殺菌の抗 MRSA 活性は、病院の表面衛生基準(<1 cfu/cm2)を満たしたが、光触媒への曝露に 3 時間を必要とした。そのため、臨床以外の表面の光触媒殺菌を検討することもできるであろう。しかしながら、臨床表面の光触媒殺菌については、代替手段というよりも従来の汚染除去手順の補助とみなすべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
光触媒による酸化チタンの殺菌効果の検証であるが、対照との比較で減少率は 20 分の 1 ~ 30 分の 1 程度であり、作用時間も 3 時間と長時間であり、高頻度接触面での使用よりも、病室やトイレの壁などの通常手が触れない「感染の最小リスク」の部分への応用はありうるかもしれない。しかしながらその場合には MRSA、バンコマイシン耐性腸球菌や Clostridium difficile などの細菌に加え、真菌類への殺菌効果の検討も必要である。
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