ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)肺炎アウトブレイクのシステマティックレビュー:P. jirovecii は伝播可能な微生物であることのエビデンスと医療における感染制御にとっての意義★★
Systematic review of outbreaks of Pneumocystis jirovecii pneumonia: evidence that P. jirovecii is a transmissible organism and the implications for healthcare infection control
E.P. Yiannakis*, T.C. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2016) 93, 1-8
背景
ニューモシスチス・イロベチイ(Pneumocystis jirovecii)肺炎は、免疫不全患者における病的状態と死亡の重要な原因である。ヒト免疫不全ウイルス陰性の免疫不全患者において P. jirovecii 肺炎の院内アウトブレイクがいくつか報告されている。P. jirovecii 伝播の主要経路はこれまで特定されていないが、これらの感染症のアウトブレイクはヒト‐ヒト間伝播か共通の環境感染源のいずれかの存在を示唆する。
目的
発表されているすべての P. jirovecii 肺炎のクラスター発生およびアウトブレイクを同定し、評価すること。主要目的は、様々な伝播様式に関するエビデンスに特に焦点を当てながら、アウトブレイクの疫学を比較することであった。
方法
PubMed および EMBASE の検索を実施し、1980 年から 2015 年 3 月までの期間に P. jirovecii 肺炎のアウトブレイクまたはクラスター発生を報告した英文の全論文を特定した。アウトブレイクの状況、アウトブレイクの特徴、分子タイピングの適用、疫学的評価および環境サンプリングの結果に関するデータを抽出した。
結果
論文 29 報で報告された 30 件のアウトブレイクを同定した。これらのアウトブレイクのうち 25 件(83%)は、固形臓器移植、それも主として腎移植を受けた患者で報告されていた。すべての研究が、例えば入院区域と外来区域の両方を含めていくつかの院内施設を共用する、限定された患者コホートの報告であった。16 報(47%)で遺伝子タイピングが実施されていた。同一の遺伝子型を認める症例がこれらすべての研究で確認された。
結論
本レビューの所見から、公衆衛生に関わるいくつかの懸念事項と、P. jirovecii 肺炎を伴う感染症に対する感染制御上の意義が明らかにされる。感染症の院内獲得およびヒト‐ヒト伝播の可能性について示されたエビデンスから、公式の感染制御政策の必要性が示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
P. jirovecii については臨床的に施設内アウトブレイクと思われる事例を国内でも報告が複数報告されている。本論文は世界規模でそうした事例を集めて検討したものであり、従来の隔離予防策の概念の修正が必要かもしれないエビデンスをつきつけている。さらに前視野方向的に検討を加え、近い将来には隔離予防策のガイドラインそのものの変更を行う必要があろう。
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