HIV 職業曝露後予防内服におけるエファビレンツによる有意な治療中断★

2016.04.29

Significant intolerability of efavirenz in HIV occupational postexposure prophylaxis


S. Wiboonchutikul*, V. Thientong, P. Suttha, B. Kowadisaiburana, W. Manosuthi
*Ministry of Public Health, Thailand
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 372-377
背景
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する職業曝露後予防内服を完了することは、予防治療の成功にとって重要である。
目的
4 週間の HIV に対する曝露後予防内服完了の失敗に関連する因子を明らかにすること。
方法
1996 年 3 月から 2014 年 6 月にタイの Bamrasnaradura Infectious Diseases Institute において、患者の血液または体液に偶然曝露された医療従事者を対象に、後向き研究を実施した。ロジスティック回帰分析を用いて、4 週間のHIV に対する曝露後予防内服完了の失敗に関連する因子を明らかにした。
結果
全体で曝露エピソード 225 件が報告された。医療従事者の平均年齢は 33.1 歳(標準偏差 9.9)で、189 名(84%)が女性であった。看護師(43%)で曝露された頻度が最も高かった。感染源の HIV の状態はエピソード 149 件(66%)で明らかにされ、これらのうち 101 件(68%)は陽性であった。曝露 225 件中、曝露後予防内服は症例 155 例(69%)で処方され、26 例で意図的に中止されていた。医療従事者 129 名中 91 名(71%)は、4 週間のレジメンを完了していた。多変量解析から、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬2 剤 + エファビレンツのレジメンが、4 週間の治療コースの不完了に関連した唯一の有意な因子であった(オッズ比 37.8、95%信頼区間 4.2 ~ 342.3、P < 0.01)。年齢、性別、スタッフであること、感染源の HIV 状態、他の曝露後予防内服レジメンなどの他の因子は、4 週間の治療コースの不完了に関連していなかった(P > 0.05)。HIV セロコンバージョンが記録された医療従事者はいなかった。
結論
2 剤ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬 + エファビレンツのレジメンは、職業曝露後予防内服の早期中止と有意に関連していた。このレジメンは、職業曝露後の HIV 予防治療として用いるべきではない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本論文はタイ国における HIV 予防投与に関するものである。129 例のさまざまなレジメンによる予防投与が実施されていたが、後方視的にはエファビレンツ(EFV)による治療中断が有意に多く、11 例の予防投与に対して完遂できたのはわずか 1 例であり、唯一の治療中断の危険因子であった。EFV の副作用として、めまい、集中力障害、傾眠などの精神神経症状が報告されている。曝露による発症は HBV や HCV に比し低いとはいえ、曝露後発症予防のための内服を 28 日間継続し完了することは重要である。しかしながら、抗 HIV薬の投与による副作用の発現頻度は、HIV 感染患者に較べ HIV 非感染者で 6 倍、治療中断は 8 倍との報告があり、HIV 非感染者での予防投与時には副作用の少ない薬剤が選択される必要がある。現在先進国においては比較的副作用が少なく、服用回数や食の影響を受けないRAL(アイセントレス)+ TDF/FTC(ツルバダ)が推奨され、日本でも同様の対応となっており、EFV は選択肢には入っていない。

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