高度救急医療センターにおけるバンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus;VISA)によるアウトブレイクの感染制御の成功★

2016.04.29

Successful infection control for a vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus outbreak in an advanced emergency medical service centre


Y. Sakai*, L. Qin, M. Miura, K. Masunaga, C. Tanamachi, J. Iwahashi, Y. Kida, O. Takasu, T. Sakamoto, H. Watanabe
*Kurume University Hospital, Japan
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 385-391
背景
バンコマイシン中等度耐性黄色ブドウ球菌(vancomycin-intermediate Staphylococcus aureus;VISA)(バンコマイシン最小発育阻止濃度: 4 mg/L)によるアウトブレイクが、2013 年から 2014 年にかけて高度救急医療センター(以下[集中治療室]と表記)で発生した。
目的
本研究の目的は、成功した感染制御策について評価することであった。
方法
入院患者 15 例の喀痰および 2 例の皮膚から、17 株のVISAが分離された。14 株は定着と考えられたが、3 株は肺炎の入院患者(3 例)の喀痰から分離された。環境培養を実施したところ、VISA は 65 カ所中 5 カ所から検出された。VISA 21 株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)および複数部位塩基配列タイピング(MLST)を実施した。
結果
PFGE および MLST を含めた分子タイピングにより、VISA 19 株のパターンが同一であること、また他のVISA 2 株のパターンが関連している可能性があることが示された。このことは、集中治療室で VISAの水平伝播が発生していたことを意味した。2013 年 8 月、感染制御チームが介入を開始した。しかし、VISAを有する新たな入院患者の発生は止まらなかった。そこで 2013 年 10 月、さらなる水平伝播を防ぐために集中治療室を部分的に閉鎖し、VISAを有する入院患者を隔離した。部分的な閉鎖後に新規症例の発生は迅速に止まったが、VISA アウトブレイクが根絶されるまでほぼ 5 か月かかった。
結論
我々のデータから、様々な他の感染制御策の実施にもかかわらず、集中治療室の部分的閉鎖が VISA アウトブレイクを終結させるうえで最も重要であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本邦における VISA の集団感染を報告した本論文は、集中治療室での感染対策の難しさを改めて痛感させるものといえよう。多職種が様々な関わりを持つ一方で、入退院は頻繁であり、緊急時も含め、全員が確実に感染予防策を遵守することは非常に難しい。集中治療室の閉鎖は、地域の医療体制に大きな負担と制約を与える。本事例による教訓は貴重なものと考える。

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