ノロウイルスをモデルウイルスとした、環境表面からのヒトウイルスのサンプル採取および検出方法のテストとバリデーション

2016.04.29

Test and validation of methods to sample and detect human virus from environmental surfaces using norovirus as a model virus


T. Ibfelt*, T. Frandsen, A. Permin, L.P. Andersen, A.C. Schultz
*Copenhagen University Hospital (Rigshospitalet), Denmark
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 378-384
背景
ウイルスはヒト感染症の原因として大きな割合を占め、特に小児および成人の胃腸炎および呼吸器感染症の原因となる。環境表面を介したヒト‐ヒト間の間接伝播は、感染症に関与している可能性があるが、これについて調査する方法はこれまでにあまりない。
目的
環境表面上から複数のヒト病原性ウイルスを検出する効率的かつ信頼できる方法のバリデーションおよびテストを行うこと。
方法
本研究は 2 つのパートに分けて行った。パート A では 3 種類のスワブ(綿製、発泡綿製、ポリエステルヘッド)と 2 種類の溶出法(直接溶解、溶解前のアルカリ化グリシン緩衝液への含浸)から成る 6 つの組合せを、人工的に汚染した表面からのヒトノロウイルス GII.7 およびメンゴウイルスの効率的な回収についてテストした。パート B では、パート A で見いだされた最良の方法を市販のマルチプレックス・リアルタイム定量的 PCR 検出アッセイを組み合わせて用い、ノロウイルス GI.1 および GII.3 に対する検出限界を確定した。
結果
ポリエステル製スワブと直接溶解の組合せにより、ノロウイルス GI.1 および GII.3 が、それぞれ 100 および 10 ゲノムコピー/cm2 まで回収できた。この方法により、ノロウイルスとメンゴウイルスの両方について有意に最も効率の高い回収結果が得られたが、他の方法間では増幅効率に差はみられなかった。
結論
以上の結果から、環境表面上における低密度のウイルスの検出が可能であることが示された。したがって我々は、ポリエステル製スワブ後の直接溶解と、マルチプレックス 定量的PCR 検出アッセイとの組合せが、環境表面における複数の呼吸器ウイルスおよび消化管ウイルスの検査に適した効率的なスクリーニングツールであると提案する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
呼吸器系と消化器系のウイルス感染症は日常的な感染症であり、しばしば病院などの集団生活をおこなう施設で集団発生が見られる。病原体の伝播は直接接触以外に、汚染された食材や水、そして環境表面からおこる。しかし、環境からのウイルスの適切なサンプリングおよび検出方法に関する知見は少ない。本論文ではマルチプレックス・リアルタイム PCR による効果的な採取方法を検討し、実際の現場での環境汚染の程度を高感度で効率よく検出することが可能となった。病院、保育施設、クルーズ船などでの集団発生時の原因病原体の検索と疫学調査に効果を発揮する可能性がある。

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