メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus)の検出における市販の発色酵素基質培地の評価

2016.03.01

Evaluation of commercial chromogenic media for the detection of meticillin-resistant Staphylococcus aureus


G.I. Brennan*, C. Herra, D.C. Coleman, B. O’Connell, A.C. Shore
*St. James’s Hospital, Ireland
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 287-292
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)を一段階で分離および同定することが可能な選択発色酵素基質培地が広く使用されている。しかし、MRSA の疫学が変化していることから、これらの発色酵素基質培地の適切性を調査する必要性がある。
目的
異なる株種の検出について、Colorex MRSA、MRSA Select II、ChromID MRSA、および MRSA Brilliance 2 の発色酵素基質培地を評価すること。
方法
mecC 遺伝子を保有する株、様々な程度のメチシリン耐性を表現する株、および患者検体から培養された分離株を含む、多様な黄色ブドウ球菌からなる収集株を解析した。
結果
SCCmec(ブドウ球菌カセット染色体)のタイプがII、IV、V、XIの株のいずれにおいても、MRSA Select II、Colorex MRSA、ChromID では、1.5 × 101 cfu/mLの濃度で発育がみられた。Brilliance 2では、mecC の MRSA は1.5 × 101 cfu/mL で発育がみられたが、mecA のMRSA 3株は高い濃度(1.5 × 104 cfu/mL)でしか発育みられなかった。4 種類の培地はすべて、MRSA に対し高い検出感度(99%以上)を示したが、幅広いレンジでメチシリン感性を示す黄色ブドウ球菌(meticillin-sensitive S. aureus;MSSA)の分離株も含めて調べると、特異度は低下した(85 ~ 73%)。さらにmec 陰性でオキサシリン耐性が境界値を示す黄色ブドウ球菌(mec-negative borderline oxacillin-resistant S. aureus:BORSA)に対しては、すべての発色酵素基質培地で偽陽性率が高かった(約 50%)。
結論
MSSA およびBORSAの一部の株では、偽陽性が得られる場合があるが、これらの培地の高い感度、ならびに調査した MRSA のほぼすべて(オキサシリン感性株および mecC 陽性株を含む)を発育させる性能は、MRSA 検出における発色酵素基質培地の価値を裏付けるものである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MRSA は多様性に富み、耐性遺伝子も複数存在するにもかかわらず、今回の検討では発色酵素基質培地はおおむね良好な成績を示した。日常の微生物検査に本培地をうまく組み込んでいくことによって、MRSA 感染症の早期診断と保菌の早期検出が可能になり、治療効果と感染対策の両方において向上が期待できると思われる。

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