初回感染の臨床症状消失後の再発性感染または保菌が認められた患者における医療との接触と、異なるクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)株獲得との関連性

2016.02.28

Association of healthcare exposure with acquisition of different Clostridium difficile strain types in patients with recurrent infection or colonization after clinical resolution of initial infection


A.K. Thabit*, S.T. Housman, C.D. Burnham, D.P. Nicolau
*Hartford Hospital, USA
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 167-172
背景
クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)エピソードの消失後、再発性感染または持続的保菌が認められた患者における異なる C. Difficile 株獲得と関連する因子の評価は行われていない。
目的
一連の治療全体に及ぶ長期追跡調査により、臨床的に CDI が治癒した患者における異なるC. Difficile 株獲得と相関する可能性がある因子を検討すること。
方法
CDI の治療が成功した患者および症状消失後に再発や保菌が認められた患者の糞便検体からベースラインおよび追跡調査時点(19 ~ 38日)で採取した C. difficile 分離株に対して PCR 法によるリボタイピングを実施した。異なる C. Difficile リボタイプ獲得と関連する因子を明らかにするために、診療録のレビューを実施した。
結果
当初 CDI が治癒した患者 25 例のうち、追跡調査時点で 5 例に再発が、8 例に保菌が認められた。患者は、年齢、性別、最初の感染が BI/NAP1/027 株によるものかに関して差がなかった。リボタイピング法により、5 例のうち 2 例は、異なる株が原因の再発であることが判明した。保菌が認められた患者のうち 3 例は株の交代を示したが、5 例はベースライン時点と同一の株を保菌していた。異なる C. difficile リボタイプが認められた患者(感染および保菌の両方)全員が、医療との接触があった。抗菌薬およびプロトンポンプ阻害薬への曝露は、株の交代と関連していなかった。
結論
医療との接触は、異なる C. difficile リボタイプの再発や保菌に一貫して関連していたが、抗菌薬やプロトンポンプ阻害薬は関連していなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
欧米での強毒株 BI/NAP1/027 流行株による CDI の増加は、医療施設関連感染症として大きな問題となっている。CDIは、初発後の 2 か月以内の再発率は 15 ~ 35%と高く、再感染よりも再発がほとんどであると報告されている。本論文は CDI の症状が改善した患者の退院後の院外での経過を追跡し、医療との接触が、初発の株とは異なる株への獲得に関連するとしている。医療との接触とは、入院、慢性透析、観察のための救急室入室、長期療養施設への入所を指す。一方で、初発 CDI の危険因子として、PPI や抗菌薬投与が報告されているが、本論文での異なる株の獲得との関連性は見いだされていない。ただし、症例数が少なく、これらを結論づけるためには、より多くの症例での検討が必要である。

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