クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症発生率:監査・フィードバックプログラムの室内清掃改善への影響

2016.02.28

Clostridium difficile infection incidence: impact of audit and feedback programme to improve room cleaning


A. Smith*, L.R. Taggart, G. Lebovic, N. Zeynalova, A. Khan, M.P. Muller
*University of Toronto, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 161-166
背景
蛍光マーキングを用いた監査・フィードバックプログラムは、室内清掃の改善をもたらすが、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染症(CDI)発生率の低下とは関連していなかった。
目的
監査・フィードバックプログラムの病院感染型 CDI 発生率への影響を評価すること。
方法
2012 年、病院 1 施設全体で監査・フィードバックプログラムを実施した。高頻度接触面の蛍光マーキングを用いて、退院時清掃の徹底性を評価した。週 1 回の監査結果は清掃スタッフに提示した。中断時系列分析を用いて、介入前(2008 年 1 月から 2011 年 12 月)と介入後(2012 年 4 月から 2015 年 6 月)の病院感染型 CDI 発生率の傾向および値の変化を検証した。
結果
全体で、1,002 回の監査が実施され、室内清掃の徹底性は 49%から 90%に改善した。病院感染型 CDI 発生率は、介入後 100,000 患者・日あたり 54 例から 42 例に低下したが、病院感染型以外の CDI 発生率は100,000 患者・日あたり 43 例から 52 例に上昇した。しかし、いずれも介入後は減少傾向を示した。時系列分析では、介入前は病院感染型 CDI 発生率は、四半期につき 100,000 患者・日あたり 0.59 例の割合で低下していたことが示された。介入後は、四半期につき100,000 患者・日あたりさらに 1.35 例低下する割合で低下率が加速した(P < 0.05)。手指衛生遵守率は介入後にわずかに上昇した。
結論
蛍光マーキングを用いた監査・フィードバックプログラムを実施した結果、室内清掃の徹底性が改善し、CDI 発生率の低下傾向が高まったように思われる。ただし、この低下の一部は、地域の CDI 疫学の変化または手指衛生の改善による可能性がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
蛍光マーキングとその測定の病院清掃における有用性に関する研究は散見されるが、直接医療関連感染の発生率との相関をみた研究はほとんどない。本研究は蛍光マーキングとその測定、およびその結果のフィードバックが医療関連感染の低減に有効である可能性を示唆する貴重な研究である。

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