2012 年から 2013 年にイタリアで実施されたマッチングによる前向きコホート研究におけるカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)感染に関連する死亡率★
Attributable mortality of carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae infections in a prospective matched cohort study in Italy, 2012–2013
A. Hoxha*, T. Kärki, C. Giambi, C. Montano, A. Sisto, A. Bella, F. D’Ancona, the Study Working Group
*Università Cattolica del Sacro Cuore, Italy
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 61-66
背景
イタリアでは、2009 年以降、カルバペネム耐性肺炎桿菌(carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae;CRKP)感染が顕著に増加して未曾有の医療問題に発展し、感染患者の治療選択肢が制限されている。
目的
イタリアの病院 10 施設でCRKPに関連する死亡率を評価し、侵襲性 CRKP 感染患者およびカルバペネム感性肺炎桿菌(carbapenem-susceptible K. pneumoniae;CSKP)感染患者の臨床像を明らかにすること。
方法
マッチングによるコホート研究を実施し、CRKP による粗死亡率および関連する死亡率を算出した。関連する死亡率は、CRKP 患者の粗死亡率から CSKP 患者の粗死亡率を減算することによって算出した。CRKP 患者および CSKP 患者の臨床像も明らかにし、条件付き Poisson 回帰を用いて死亡の決定因子を分析した。
結果
本研究には、CRKP 患者 49 例、CSKP 患者 49 例の計 98 例を含めた。CRKP 患者は CSKP 患者よりも侵襲的な手技を受けており、疾患重症度(Simplified Acute Physiology Score II により測定)が高い傾向にあった。CRKP による 30 日時点の関連する死亡率は 41%であった。CRKP 患者は、CSKP 患者と比較して 30 日以内に死亡した割合が 3 倍高かった(マッチング罹患率比[matched incidence rate ratio;mIRR]3.0、95%信頼区間[CI]1.5 ~ 6.1)。潜在的な交絡因子の補正後もリスクは同じであった(補正 mIRR 3.0、95%CI 1.3 ~ 7.1)。
結論
CRKP 感染は、他の患者特性を補正した後でも、患者の死亡率に顕著に影響した。CRKP の拡大制御のため、CRKP が検出された病院では、制御策を優先して行うことが望ましい。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
カルバペネム耐性肺炎桿菌(CRKP)は、カルバペネム系抗菌薬をはじめとした、すべての βラクタム薬を分解する酵素(カルバペネマーゼ)を産生する耐性菌であり、プラスミドを介して耐性が伝達される。CRKP は、EU諸国全体においてこの数年で発生率は2倍になり、カルバペネム耐性率は、1 位ギリシャで約 60%、2 位イタリアで 34%と飛躍的に増加している。本論文は耐性率の高いイタリアでのカルバペネム耐性と非耐性の肺炎桿菌での死亡率を比較し、死亡率が 3 倍高いとの結論である。適切な治療薬がない現状では、一旦増えてしまった耐性菌の制御は極めて困難である。
なお、EU でのカルバペネマーゼ産生菌の状況は、下記の URL で知ることができる。
ECDC Technical Report, Carbapenemase-producing bacteria in Europe, Interim results from the European survey on carbapenemase-producing Enterobacteriaceae (EuSCAPE) project 2013
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/antimicrobial-resistance-carbapenemase-producing-bacteria-europe.pdf
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