小児におけるカルバペネム耐性グラム陰性桿菌の分子生物学特徴と保菌のリスク因子:トルコの新生児集中治療室におけるニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ(NDM)産生アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)の出現★
Molecular characterization and risk factors for carbapenem-resistant Gram-negative bacilli colonization in children: emergence of NDM-producing Acinetobacter baumannii in a newborn intensive care unit in Turkey
A. Karaaslan*, A. Soysal, G. Altinkanat Gelmez, E. Kepenekli Kadayifci, G. Söyletir, M. Bakir
*Marmara University School of Medicine, Turkey
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 67-72
背景
多剤耐性グラム陰性桿菌は、医療関連感染の原因として 50%以上を占める。カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の保菌動態、特性、リスク因子のデータは小児において乏しい。
目的
トルコの大学附属 3 次病院の小児科病棟に入院した患児から分離されたカルバペネム耐性グラム陰性桿菌の分子生物学的特徴および保菌のリスク因子を解析すること。
方法
前向き症例対照研究をトルコ・イスタンブールの大学病院において実施した。
結果
2013 年 3 月から 10 月までに入院した患児 762 例すべてから計 1,840 個の直腸スワブ検体を採取した。そのうち176 例(23%)がカルバペネム耐性グラム陰性桿菌を保菌していた。これらの患児のうち、72 例(9%)がカルバペネム耐性腸内細菌科細菌を、138 例(18%)がカルバペネム耐性非発酵性グラム陰性桿菌を、34 例(4%)が両方を保菌していた。入院後、カルバペネム耐性グラム陰性桿菌の保菌までの日数の中央値は 10 日(1 から 116 日)であった。一方、直腸保菌の持続期間の中央値は 8 日(1 から 160日)であった。A. baumannii 分離株で同定されたカルバペネマーゼのうち、2 番目に多かったのはNDM(31%)であり、これはこれまでトルコでは検出されていなかった。NDM産生 A. baumannii を保菌していた 17 例はすべて新生児集中治療室に入室中の児であった。カルバペネム耐性グラム陰性桿菌保菌の独立したリスク因子は、年齢 1 歳未満、経鼻胃管留置、慢性基礎疾患の存在、アンピシリン使用、外科的な処置、カルバペネム使用歴であった。
結論
本論文は、トルコの新生児病棟でのNDM産生A. baumannii 発生に関する初の報告である。カルバペネム使用は、カルバペネム耐性腸内細菌科細菌と同非発酵性グラム陰性桿菌両方の保菌の独立したリスク因子であり、この結果は抗菌薬適正使用推進プログラム Antibiotic stewardship program の重要性を強く示している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
NICU や新生児病棟でのカルバペネム耐性グラム陰性桿菌の制御は非常に難しい。本例では耐性 Acinetobacter の菌血症例発生を機にスクリーニングが開始されたが、最終的に Acinetobacter のみならず、多数のカルバぺネム耐性腸内細菌科細菌の保菌も判明したという驚くべき結果であった。さらにその耐性機序も OXA-48、IMP-1、NDM、GES など様々であった。医療従事者の中に保菌者がいる可能性も指摘されており、非常に厳しい事例といえる。
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