基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)またはクレブシエラ(Klebsiella)属菌の感染が転帰および入院費用に及ぼす影響★
Impact of infection with extended-spectrum β-lactamase-producing Escherichia coli or Klebsiella species on outcome and hospitalization costs
J.A. Maslikowska*, S.A.N. Walker, M. Elligsen, N. Mittmann, L. Palmay, N. Daneman, A. Simor
*Sunnybrook Health Sciences Centre, Canada
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 33-41
背景
基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は重要な感染源であるが、カナダ人を対象とした ESBL に関連した感染の影響を評価したデータは不足している。
目的
ESBL 産生大腸菌(Escherichia coli)またはクレブシエラ(Klebsiella)属菌(ESBL-EcKs)に感染した患者が、非 ESBL 産生株に感染した患者と比較して異なる臨床転帰、微生物学的転帰、死亡率および/または医療資源の使用を示すか否かを検討すること。
方法
2010 年 6 月から 2013 年 4 月に入院した ESBL-EcKs 患者 75 例を非 ESBL-EcKs 感染対照とマッチさせた後向き症例対照研究を実施した。患者レベルの費用データは、当施設の事務管理部門から入手した。臨床的データは、電子データベースおよび紙のカルテを用いて収集した。
結果
患者あたりの感染による入院費用中央値は、症例が対照より高かった(10,507 カナダドル 対 7,882 カナダドル、差の中央値 3,416 カナダドル、P = 0.04)。費用増加の主要な要因は、感染による入院期間の延長(8 日 対 6 日、P = 0.02)であり、主要な費用区分は患者の位置(病棟、ICU)および間接的医療費(感染予防および管理に関連した費用を含む)であった。症例は臨床的不成功となる率が高く(25%対 11%、P = 0.03)、全死因死亡率も高かった(17%対 5%、P = 0.04)。経験に基づく適切な抗菌療法を処方されていたのは、患者症例の半数未満であり、対照はほとんどすべての状況で適切な初期治療を受けていた(48%対 96%、P < 0.01)。
結論
ESBL-EcKs による感染患者は、臨床的不成功および死亡のリスクが増加しており、また、カナダ医療制度に対して患者あたり 3,416 カナダドルの追加費用を伴う。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ESBL 産生菌と非産生菌のそれぞれによる感染症の治療について評価した論文である。予測されていたことがきちんと数字になってできていた印象であった。入院期間が 2 日延長し、費用は 30 万円弱余分に発生し、その上、ESBL 産生菌群では、治療不成功、全死因死亡率が有意に高かったことが明らかになった。この研究を行う上での難しさは、症例にマッチした対象を選ぶ際の定義であると思われる。
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