嚢胞性線維症専門医療施設で緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)感染を長期的にモニタリングする方法とその理由★
How and why to monitor Pseudomonas aeruginosa infections in the long term at a cystic fibrosis centre
L. Kalferstova*, K. Vilimovska Dedeckova, M. Antuskova, O. Melter, P. Drevinek
*Charles University and Motol University Hospital, Czech Republic
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 54-60
背景
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、嚢胞性線維症(CF)患者において慢性の呼吸器感染症を引き起こす主な原因菌であり、CF 患者間の交差感染リスクをもたらす。
目的
緑膿菌の長期サーベイランスのアルゴリズムを提案し、患者数が約 300 例の CF 専門医療施設で疫学的状況のモニタリングの適切性を評価すること。
方法
9 年間にわたり、感染患者 131 例から得た 300 株以上の緑膿菌分離株を multi-locus sequence typing(MLST)および/または random amplified polymorphic DNA(RAPD)法により解析した。
結果
MLST法による解析により、97 のシークエンス型が同定された。これらのシークエンス型は、RAPD 法では 17 のクラスターにしか分散しておらず、偽クラスターを形成した。これは、操作が簡単な RAPD 法が、個体間ではなく個体内での菌株解析に唯一適していることを示している。流行性株は認められなかった。縦断的解析により、この観察期間中に 131 例中 110 例が同一菌株に感染していたことが判明した。その一方で、残りの 21 例では菌株の置換または新規感染が認められた。131 例中99 例に慢性感染が認められ、残りの 32 例は、Leeds の基準によれば、間欠的感染(一過性感染の繰り返し)の基準に一致した。間欠的感染患者 32 例中 18例 (56%)は、最長 9 年間にわたり同一菌株に感染していた。
結論
菌株種は、慢性感染患者および間欠的感染患者 131 例中 16%でのみ変化していた。間欠的感染とみなされた患者の56%が、実際、長年にわたり同一菌株に慢性的に感染していた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
嚢胞線維症は、細胞膜の塩素イオンチャンネルをコードする遺伝子の変異によって発生する白人の遺伝性疾患である。繊毛運動機能低下と粘稠な粘液産生による気道閉塞を引き起こす気道疾患であり、経過中に緑膿菌による慢性感染症を繰り返し、肺機能が徐々に低下する。緑膿菌の感染は、現在は環境のみならず、患者間の交差感染が証明され、感染予防対策の重要性が示唆されている。本論文は、9 年間にわたり CF 患者の緑膿菌の菌株の変化を観察し、16%においては別の菌株に置き換わったり、別の株による再感染が発生していることが、MLST 解析により判明した。従来の RAPD 法では株の分離能が十分ではないため、長期にわたる緑膿菌の株の変化を見るには、MLST による方法が CF 患者において有効であると結論している。
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