新生児集中治療室において母乳の共有を介して伝播した基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生大腸菌(Escherichia coli)のアウトブレイク
Outbreak of extended-spectrum β-lactamase-producing Escherichia coli transmitted through breast milk sharing in a neonatal intensive care unit
K. Nakamura*, M. Kaneko, Y. Abe, N. Yamamoto, H. Mori, A. Yoshida, K. Ohashi, S. Miura, T.T. Yang, N. Momoi, K. Kanemitsu
*Fukushima Medical University, Japan
Journal of Hospital Infection (2016) 92, 42-46
背景
新生児集中治療室(NICU)のルーチンのサーベイランスは、2012 年 8 月に基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌(Escherichia coli)(ESBL-大腸菌)の検出増加を示したが、それ以前の約 1 年間は検出されていなかった。
目的
NICU における ESBL-大腸菌アウトブレイクに関する院内の感染管理チームによる検討および介入を報告すること。
方法
研究対象は、ESBL-大腸菌培養陽性の新生児 6 例(呼吸器系の保菌 5 例、尿路感染 1 例)、研究期間中に ESBL-大腸菌陰性の対照乳児、および母乳を提供した母親とした。ESBL-大腸菌培養陽性およびパルスフィールド・ゲル電気泳動による分離株の分子タイピング陽性のリスク因子候補を同定するために症例対照研究を実施した。
結果
研究期間中に、低温殺菌されていない母乳の共有を受けた後の ESBL-大腸菌感染のオッズ比は、49.17 であった(95%信頼区間 6.02 ~ 354.68、P < 0.05)。パルスフィールド・ゲル電気泳動パターンはすべての株が同一であることを示し、同一の病原菌が特定の提供者の絞りたての母乳中に検出された。母乳の共有を中止後に、アウトブレイクの終結は成功した。
結論
今回のアウトブレイクは、母乳パックの汚染が新生児に薬物耐性病原菌を伝播しうることを示す。人乳の提供者は低温殺菌と細菌培養の必要性を認識する必要がある。なお、細菌培養は、凍結の前後と乳児に与える前に実施すべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本では肝炎や HIV、HTLV-1 などの感染症の有無を調べ、同意書を取得した上で母乳を共有することがある(そうだ)。本事例では共有された母乳のドナーであった母親の乳頭、母乳、そして母乳を共有した患児から同一の ESBL 産生大腸菌が検出された。母乳の扱いについては、いま一度、各自の施設の状況を確認しておくと良いかもしれない。
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