冠動脈バイパス術後の深部胸骨創感染症の減少のための衛生学的介入★

2015.12.31

Hygienic interventions to decrease deep sternal wound infections following coronary artery bypass grafting


B. Lytsy*, R.P.F. Lindblom, U. Ransjö, C. Leo-Swenne
*Uppsala University, Sweden
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 326-331
背景
Uppsala 大学病院の胸部外科部門は、合計 25 床(1病室当たり 1 ~ 4 床)および超清浄空気供給装置を備えた手術室 5 室からなる手術棟を有しており、年間約 700 件の関心術(このうち 250 件は単独冠動脈バイパス術[CABG])を実施している。衛生ガイドライン類が存在しているにもかかわらず、2009 年に深部胸骨創感染症の発生率が許容できないまで上昇した。
目的
根本原因分析とその後の質改善のための介入によって、CABG 後の深部胸骨創感染症の発生率が低下したかどうかを明らかにすること。
方法
単独 CABG を実施した患者のうち、深部胸骨創感染症のために再手術を必要とする患者のみを対象とした。再手術時にスワブ採取および組織生検を実施し、標準的な方法で分析した。深部胸骨創感染症は米国疾病対策センター(CDC)の定義に従い、前向きに登録した。2009 年 9 月から 2010 年 4 月に感染の根本原因分析を実施した。2010 年 4 月に根本原因分析の結果および全国的な推奨実践に基づく介入を決定し、2010 年 7 月 1 日までに本格的な導入を開始した。胸骨切開部位から 0.5 m 以内で能動的エアサンプリングを行った。
結果
CABG 実施当たりの深部胸骨創感染症発生率は、介入前の 5.1%から介入後には 0.9%に低下した。介入前の創培養陽性率は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)27.1%、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CoNS)47.1%、介入後は黄色ブドウ球菌 23.1%、CoNS 30.8%であった。空気中の菌数は 5 cfu/m3 以下であった。
結論
過誤の原因が複数である場合は、臨床職員と感染制御チームの両者が参加する根本原因分析は、医療関連感染症などの有害なイベントをもたらす原因を評価するためのツールとなり得る。根本原因分析に基づく質改善のための系統的介入により、CABG 後の深部胸骨創感染症の発生数が減少すると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
根本原因分析(RCA;root cause analysis)の手法を用いた、術後創感染の発生の解析と対策について検討した論文である。本誌既報(J Hosp Infect (2015) 89, 331-334)に詳しい解説があるので参照されたい。

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