防護環境にある血液内科病棟の病室付設の浴室:糸状真菌の汚染源か?
En-suite bathrooms in protected haematology wards: a source of filamentous fungal contamination?
R. Picot-Guéraud*, C. Khouri, M.-P. Brenier-Pinchart, P. Saviuc, A. Fares, T. Sellon, A. Thiebaut-Bertrand, M.-R. Mallaret
*CHU Grenoble, France
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 244-249
背景
当大学病院では 2008 年に浴室を付設した防御環境にある高リスク者用の血液内科病室が 25 室建造されたにもかかわらず、これらの病棟では病院感染による侵襲性アスペルギルス症の散発例の発生が依然としてみられている。
目的
本研究の目的は、これらの病室内で糸状真菌の予想外の環境汚染源を特定することである。
方法
2 か月間にわたり、防護環境にある全病室 25 室とその使用中の付設の浴室で、サンプリング実施日に 2 回、空気中の環境内真菌叢(合計 150 サンプル)とともに空気中粒子計数および物理的環境パラメータ(流速、温度、湿度、気圧)の前向きモニタリングを行い、さらに浴室表面(合計 150 サンプル)のモニタリングを実施した。
結果
病室の層流中では、サンプリング実施時に患者が在室している状態で 2 サンプル(4%、50 件中 2 件)から真菌が分離され、その最大値は 2 cfu/500 L であった(アスペルギルス[Aspergillus]属はなし)。しかし、浴室の空気サンプルの真菌汚染率は 88%(50 件中 44 件)であり、中央値範囲(median range)は 2 cfu/500 L、最大値は 16 cfu/500 L であった(監修者注:median range が何を示しているか判然としないが、論文中の記載では中央値が 4 cfu/500 L、最大値が 32 cfu/500 L となっている)。Aspergillus 属は汚染サンプルの 24%(44 件中 12 件)に、アスペルギルス・フミガーツス(A. fumigatus)は 6%(44 件中 3 件)に認められた。浴室表面はサンプルの 5%(150 件中 8 件)が糸状真菌で汚染されていた。
結論
本研究から、防護環境にある病棟の付設の浴室は真菌の汚染源である可能性が示された。浴室の空気を対象とした処置の検討に先立って、技術者らはまず特定された問題点の是正、すなわち HEPA フィルタの交換、自動空気制御の改善、および技術的仕様の初期状態への復元を実施した。対策の有効性に関する評価が計画されている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
アスペルギルス属は生活環境菌であり、いかなる空調設備や建築改修工事も汚染源となり得る。したがって、定期的な設備メンテナンスが重要である。
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