透析患者におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)保菌のリスク因子:メタアナリシス

2015.11.30

Risk factors for meticillin-resistant Staphylococcus aureus colonization in dialysis patients: a meta-analysis


S. Karanika, F.N. Zervou, I.M. Zacharioudakis, S. Paudel, E. Mylonakis
*Warren Alpert Medical School of Brown University, RI, USA
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 257-263
背景
透析患者は、特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)に易感染性であり、この集団では MRSA 保菌は重篤な感染症のリスク上昇と関連する。
目的
透析患者における MRSA 保菌のリスク因子を特定すること。
方法
本研究は、MRSA 保菌のリスク因子について報告している研究のシステマティックレビューおよびメタアナリシスである。PubMed および EMBASE の文献検索を実施し、透析を施行中の患者における MRSA 保菌のリスク因子に関するすべての研究を特定した。入院歴、透析アクセスのタイプ、併存疾患、透析期間、性別、透析時間、および抗菌薬使用歴を抽出し、この集団の MRSA 保菌との想定される関連を評価した。
結果
文献 8,252 件のうち 10 件を本研究の対象とし、これらには透析患者 2,364 例のデータが含まれていた。過去 12 か月以内の入院(オッズ比[OR]1.93、95%信頼区間[CI]1.04 ~ 3.58)および一時的透析アクセスの使用(相対リスク 1.66、95%CI 1.06 ~ 2.60)が、MRSA 保菌リスクの有意な高値と関連していた。MRSA 保菌患者は、保菌がない場合と比較して血清アルブミンが低値であり(OR 0.8、95%CI 0.68 ~ 0.95)、また慢性肺疾患患者では MRSA 保菌が多くみられた(OR 2.16、95%CI 1.04 ~ 4.51)。腹膜透析患者に関するデータはなかった。
結論
除菌戦略が含まれる場合もある積極的なサーベイランスを実施する場合には、過去 1 年間の入院、一時的透析アクセス、血清アルブミン低値、および慢性肺疾患の併存がみられる透析患者のサブグループに焦点を当てるべきであることが示唆される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
MRSA 保菌の高リスク者を特定することで、より適切な予防策の徹底が図られる。同じブドウ球菌属の中でも、常在性が高くヒトに対する病原性の低い表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌は、保菌のリスクはもとより感染発症のリスクや長期予後に関しても大きく異なる。さらに、その黄色ブドウ球菌がメチシリン耐性であることは多剤耐性菌であることを意味しており、本来、誰においても常在化は歓迎されるべきものではない。

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