長期血液透析患者に対するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)除菌の有効性:システマティックレビューおよびメタアナリシス
Effectiveness of meticillin-resistant Staphylococcus aureus decolonization in long-term haemodialysis patients: a systematic review and meta-analysis
H.M. Gebreselassie*, E. Lo Priore, J. Marschall
*Bern University Hospital, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 250-256
背景
長期血液透析患者は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)感染症の前駆状態である同菌保菌の高リスク集団である。
目的
血液透析患者に対する鼻腔(±全身清拭)MRSA 除菌の有効性について、システマティックレビューおよびメタアナリシスによりまとめること。
方法
Medline、Embase、Cochrane データベース、clinicaltrials.org、および学会抄録を使用して、血液透析患者の MRSA 除菌の成功についての調査を行っている適格な研究を特定した。統計学的解析には Stata 13 を用いて、各研究ごとの除菌成功率と 95%信頼区間(CI)を算出した。尤度比検定を用いて、研究間の不均一性を評価した。
結果
6 件の前向きコホート研究の既報および学会抄録として報告されている 1 件の研究が、組み入れ基準に合致した。これらの研究に登録された血液透析患者 1,150 例のうち、鼻腔スワブから MRSA が分離されたのは 147 例(12.8%)であった。対象とした試験中 6 件では、除菌のために鼻腔内ムピロシン軟膏とクロルヘキシジン全身清拭を併用していた。最も多く使用されていたプロトコールは、鼻腔内ムピロシン軟膏塗布 1 日 3 回 + クロルヘキシジン全身清拭 1 日 1 回の 5 日間コースであった。プールした除菌成功割合は 0.88(95%CI 0.75 ~ 0.95)であった。固定効果モデルとランダム効果モデルを比較した尤度比検定により、研究間に有意な不均一性が認められた(P = 0.047)。7 件の研究中 4 件では、合計 94 例の保菌者でその後の MRSA 感染症の確認を行っており、このうち感染症がみられたのは 2 例(2%)であった。
結論
ムピロシンと全身除菌の併用は、血液透析患者の MRSA 保菌の根絶に高い有効性を示した。しかし、現時点の文献には、この介入の有効性の比較研究が不足しているという特徴がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
MRSA 保菌者の除菌対応にムピロシン軟膏の塗布やクロルヘキシジンによる全身除菌の併用がある程度の効果を来すことは予想できるが、長期的にみて確実に除菌てきているかどうかという視点での研究成果の報告はほとんどない。また、こうした除菌を多くの保菌者に行うことで、消毒薬抵抗性菌や抗菌薬耐性菌の出現も起こり得るため、注意が必要である。さらなるエビデンスの構築が必要である。
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