心臓弁膜手術または冠動脈バイパス術後の手術部位感染症(SSI):フランスにおける 2008 年から 2011 年の全国的な SSI の ISO-RAISIN サーベイランス★
Surgical site infection after valvular or coronary artery bypass surgery: 2008-2011 French SSI national ISO-RAISIN surveillance
S. Cossin*, S. Malavaud, P. Jarno, M. Giard, F. L’Hériteau, L. Simon, L. Bieler, L. Molinier, B. Marcheix, A.-G. Venier, the ISO-RAISIN Steering Committee
*CHU, CCLIN Sud-Ouest, France
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 225-230
背景
多施設を対象とした心臓手術後の手術部位感染症(SSI)の発生率に関する情報を得ることは容易ではない。また転帰に影響を及ぼすと考えられる病棟の特性についても、これまで解析は行われてこなかった。
目的
冠動脈バイパス術および心臓弁膜手術後の SSI 発生に関連する、個人レベルおよび病棟レベルの因子を明らかにすること。
方法
フランスにおける全国的な SSI データベースである ISO-RAISIN の 2008 年から 2011 年のデータセットを使用した。成人患者のみを対象とした。統一した質問票を用い、手術を受けた各患者について回答を得、SSI の有無による患者特性を明らかにした。多段階ロジスティック回帰分析モデルを用いて、SSI を二値変数(2 段階:患者および病棟)とし、患者および病棟の SSI のリスク因子の解析を行った。
結果
39 病棟の患者 8,569 例の SSI 発生率は 2.2%であった。144 例(74%)から微生物が分離され、内訳はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌 35%(51 例)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)23%(33 例)、大腸菌(Escherichia coli)6%(8 例)であった。SSI 発生率が高まることと関連した因子は、術前の入院期間、経過観察期間、手術時間が 75 パーセンタイル値を超えること、および心臓外科病棟全体の SSI 発生率であった。病棟間でみられた残りの不均一性(オッズ比中央値 1.53)は、術前の入院期間と同程度であった(オッズ比 1.57)。
結論
本研究からは、SSI 発生との関連は患者のリスク因子のほうが強固であったものの、病棟レベルの影響が存在することのエビデンスが示された。是正のための介入を考慮する際は、このことを念頭に置く必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
これまでの検討で、心臓外科領域で明らかになっていた SSI のリスク因子には、肥満など患者側のものが主体であり、コントロールがつけにくいものも含まれていた。今回の多施設研究は、初めて病棟側のリスク因子を明らかにしたものである。病棟側のリスク因子をコントロールできる方法を詳細に解析し、実際に介入することで、SSI の低下に結びつく可能性がある。今後の検討ならびに情報に期待したい。
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