英国における医療用デバイスおよび処置による菌血症・真菌血症の入院患者の転帰

2015.10.30

Outcomes in consecutive hospitalized UK patients with bacteraemia or fungaemia caused by medical devices and procedures


M. Melzer*, D. Wickramasinghe, C. Welch
*Barts Health NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 146-152
背景
入院患者に生じた医療用デバイス・処置に起因する菌血症・真菌血症の転帰については、データは乏しく、不足してもいる。
目的
医療用デバイスまたは処置に起因する菌血症・真菌血症と死亡との関連を明らかにすること。
方法
2012 年 12 月から 2013 年 11 月に、菌血症・真菌血症入院患者の基本データ、および臨床的・微生物学的データを連続的に収集した。一般化推定方程式を用いた多変量解析を行って関連を明らかにした。
結果
患者 500 例に合計 594 件の菌血症・真菌血症エピソードが発生した。医療用デバイスまたは処置に起因するエピソードがみられた患者の 7 日死亡率は 167 件中 7 例(4.2%、95%信頼区間[CI]1.7% ~ 8.4%)、30 日死亡率は 167 件中 12 例(7.2%、95%CI 3.8% ~ 12.2%)であった。補正を行った後の、医療用デバイス・処置に関連する菌血症・真菌血症エピソードと死亡との関連は有意ではなく、7 日死亡のオッズ比(OR)は 2.86(95%CI 0.80 ~ 10.12)、30 日死亡の OR は 1.72(95%CI 0.71 ~ 4.16)であった。大腸菌(Escherichia coli)菌血症と黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)菌血症の 30 日死亡率には、有意に近い差が認められた(47 件中 6 例[12.8%、95%CI 4.8% ~ 25.7%]対 24 件中 0 例、P = 0.067)。菌血症・真菌血症に関連する 30 日死亡率は、カテーテル関連尿路感染症(多くは大腸菌関連)患者のほうが血管内デバイス関連感染症(多くは黄色ブドウ球菌関連)患者と比較して有意に高かった(51 件中 4 例[7.8%、95%CI 2.2% ~ 18.8%]対 62 件中 1 例[1.6%、95%CI 0.0% ~ 8.7%]、P = 0.028)。
結論
医療用デバイス・処置に関連する大腸菌菌血症を予防するために、特別な配慮が必要である。尿道カテーテルに起因する感染症の予防には、さらに注意を払うべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
本研究の 594 件の菌血症・真菌血症エピソードのうち、医療用デバイス・処置に関連していたものは 211 件(36%)であった。しかも大腸菌菌血症が黄色ブドウ球菌菌血症よりも多く認められており、大腸菌菌血症の内訳も尿路・胆道・消化管・生殖器のみならず、中心静脈カテーテル関連由来など多彩であった。本邦と比較して非常に興味深い。

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