術前の除毛と手術部位感染症:ランダム化対照試験のネットワークメタアナリシス★
Preoperative hair removal and surgical site infections: network meta-analysis of randomized controlled trials
A. Lefebvre*, P. Saliou, J.C. Lucet, O. Mimoz, O. Keita-Perse, B. Grandbastien, F. Bruyère, P. Boisrenoult, D. Lepelletier, L.S. Aho-Glélé on behalf of the French study group for the preoperative prevention of surgical site infections
*Service d’ épidémiologie et hygiène hospitalières, CHU de Dijon, France
Journal of Hospital Infection (2015) 91, 100-108
術前の除毛は手術部位感染症(SSI)の予防のため、または体毛が切開部位の妨げになることを予防するために行われてきた。著者らの目的は、SSI 予防を目的とした除毛に関する公表されたランダム化対照試験の最新のメタアナリシスを行うこと、およびネットワークメタアナリシスにより直接的エビデンスと間接的エビデンスを統合し、化学的除毛とクリッピングの比較評価を行うことである。PubMed、ScienceDirect、および Cochrane のデータベースを用いて、同一の集団内で種々の除毛法と除毛を行わない場合の解析を実施しているランダム化対照試験を検索した。ペア解析およびネットワークメタアナリシスを実施した。選択した各論文における研究の限界について、2 名の独立した評価者が Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)法※に基づき評価した。19 件の研究が組み入れ基準に合致した。クリッピングと化学的除毛を比較した研究はなかった。剃毛を基準としたネットワークメタアナリシスからは、クリッピング(相対リスク[RR]0.55、95%信頼区間[CI]0.38 ~ 0.79)、化学的除毛(RR 0.60、95%CI 0.36 ~ 0.97)、または除毛なし(RR 0.56、95%CI 0.34 ~ 0.96)は SSI が有意に少ないことが示された。除毛なしと、化学的除毛(RR 1.05、95%CI 0.55 ~ 2.00)またはクリッピング(RR 0.97、95%CI 0.51 ~ 1.82)との間、または化学的除毛とクリッピングとの間(RR 1.09、95%CI 0.59 ~ 2.01)には有意差は認められなかった。19 件のランダム化対照試験を対象とした本メタアナリシスにより、除毛には SSI 予防に関する有益性は認められないこと、および剃毛による除毛は SSI リスクが高いことが確認された。化学的除毛とクリッピングの比較評価が行われたのは初めてであり、SSI リスクは両法で同等と考えられた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
近年、SSI 予防における除毛とその方法に関する研究が増えてきているが、本論文はそれらのメタアナリシスである。その結果からは剃毛は SSI のリスクが高いこと、そして化学的除毛とクリッピング、そして除毛なしの 3 群では SSI のリスクに有意差がないことが示されている。もはや剃毛を行っている病院はかなり少なくなってきていると思われるが、剃毛を廃止し、さらに手術手技的に必要のない除毛は不要であることを主張するためによい論文ではないだろうか。
監訳者注:
※Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation(GRADE)法:Guyatt GH らの論文(J Clin Epidemiol 2011;64:407)参照。
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