産科病院における移住者を対象としたX線撮影を用いた選択的スクリーニングによる結核伝播予防

2015.07.31

Preventing tuberculosis transmission at a maternity hospital by targeted screening radiography of migrants


V. Schechner*, J.B. Lessing, G. Grisaru-Soen, T. Braun, J. Abu-Hanna, Y. Carmeli, G. Aviram
*Tel Aviv University, Israel
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 253-259
背景
イスラエルは近年、東アフリカ諸国からの多数の不法移住者の目的地となっている。国境では活動性結核の検出・治療の取り組みが行われているにもかかわらず、当施設で診断されたすべての活動性結核症例のうち、75%は不法移住者である。2012 年には当施設の産科病棟、新生児集中治療室、および小児集中治療室で、感染性を有するが外見的な症状が認められない陣痛発作中の移住者の入院後に大規模な結核曝露が発生した。その後、患者および職員の結核曝露を予防するために、全病院的なスクリーニングプログラムを実施した。
目的
本介入の当産科病院での初年度の結果を報告すること。
方法
結核の高度蔓延国からのすべての不法移住者を対象として、当産科病院入院時に胸部 X 線スクリーニングを行った。放射線科医 1 名が直ちに、その結果を「活動性肺結核の疑いあり」または「疑いなし」に分類した。胸部 X 線撮影で結核が疑われた患者に対して空気感染隔離策を実施し、さらに評価を行った。
結果
外見的な症状が認められない女性移住者 431 例に胸部 X 線スクリーニングを実施した。ほとんどは(363 例、84%)、陣痛発作中の受診であった。胸部 X 線撮影により活動性肺結核が 11 例(2.6%)で疑われ、3 例で確定診断された(スクリーニングを実施した女性の 0.7%)。胸部 X 線撮影で見逃された結核症例はなかった。患者および病院職員のいずれも、結核への曝露を受けることはなかった。
結論
高リスク女性を対象とした産科病院入院時の胸部 X 線撮影による結核の選択的スクリーニングは、結核の院内伝播予防戦略として効率が高く、有効であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
スクリーニングを実施した女性の 0.7%、人口 10 万人あたりに換算すると 700 人という驚くべき数字がはじき出される。日本の結核罹患率(人口 10 万人対の新登録結核患者数)(16.1)は、米国(3.1)の 5.2 倍、ドイツ(4.9)の 3.3 倍、オーストラリア(5.7)の 2.8 倍であるが、この 44 倍に相当する。高リスク集団の処置の際には、呼吸器防護が欠かせなさそうだ。

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