指腹のウイルス汚染の減少:手洗いはアルコール製手指消毒薬より有効である★
Reducing viral contamination from finger pads: handwashing is more effective than alcohol-based hand disinfectants
E. Tuladhar, W.C. Hazeleger, M. Koopmans, M.H. Zwietering, E. Duizer, R.R. Beumer*
*Wageningen University, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 226-234
背景
手指衛生は、手指を介するウイルス伝播の遮断に重要である。細菌に対するアルコール製手指消毒薬の有効性は示されているが、ウイルス伝播の減少に対する有効性は明らかではない。
目的
ヒトの腸内ウイルスおよび呼吸器系ウイルスに対するアルコール製手指消毒薬の有効性を調べること、およびノロウイルスに対するアルコール製手指消毒薬と、石けんおよび水による手洗いの有効性を比較すること。
方法
ヒトの腸内ウイルスおよび呼吸器系ウイルスに対するプロパノール製およびエタノール製手指消毒薬各 1 製品の有効性を担体試験により調べた。ノロウイルス GI.4、GII.4、および MNV1 に対するアルコール製手指消毒薬と、石けんおよび水による手洗いの有効性をフィンガーパッド試験により調べた。
結果
アルコール製手指消毒薬により、ロタウイルスおよびインフルエンザウイルス A 型の感染性は 30 秒以内に完全に消失し、ポリオウイルス Sabin 1 型、アデノウイルス 5 型、パレコウイルス 1 型、および MNV1 の感染性は 3 分以内に < 3 log10 低下した。30 秒間の石けんおよび水による手洗いによる MNV1 の感染性の低下(> 3.0 ± 0.4 log10)は、手指のアルコール処理(2.8 ± 1.5 log10)と比較して有意に大きかった。石けんおよび水による 30 秒間の洗浄により、すべての指腹から MNV1(> 5 log10)、ノロウイルス GI.4(> 6 log10)、および GII.4(4 log10)のゲノムコピーが完全に消失した。プロパノール製手指消毒薬による手指の処理では完全消失は認められず、PCR 単位でみたゲノムコピー数の減少は、ノロウイルス GI.4 で > 2.6 log10、GII.4 で > 3.3 log10、および MNV1 で > 1.2 log10 であった。
結論
手指からノロウイルスを除去するには、石けんおよび水による手洗いのほうがアルコール製手指消毒薬を使用するよりも優れている。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本論文は、①エンベロープのあるウイルス(インフルエンザウイルス)には、アルコール消毒が効果的であるが、②エンベロープのないアデノウイルスおよびエンテロウイルス属ウイルス等(ロタウイルスを除く、マウスノロウイルス、ポリオウイルス、パレコウイルスポリオ)ではアルコールの効果は不確実である、③ヒトのノロウイルスには石けんと流水による手洗い(ここでは指先の手洗い)が物理的除去という点ではるかに効果的である、ことを確認した論文である。特にアルコールのノロウイルスへの効果は、ノロウイルスが培養できないため、保存されていた患者の便を本論文では使用しており、実際の効果を見ている点で説得力がある。
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