マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法を用いた大腸菌(Escherichia coli)シークエンス型 131 の検出:感染制御方針にとっての意義は何か?
Detection of Escherichia coli sequence type 131 by matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry: implications for infection control policies?
J. Lafolie*, M. Sauget, N. Cabrolier, D. Hocquet, X. Bertrand
*CHU Besançon, France
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 208-212
背景
シークエンス型 131(ST131)は、腸管外病原性大腸菌(Escherichia coli)の優勢な系統であり、基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌の世界中への拡散に重要な役割を果たしている。ST131 によるパンデミックは、主として高度に適応した単一のサブクローン H30-Rx のクローン性増殖の結果である。このサブクローンは、病院内で獲得される頻度が他の ESBL 産生大腸菌クローンよりも高い。
目的
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)を用いて、感染制御を目的とした ST131 の同定のための迅速な方法を開発すること。
方法
大腸菌分離株 109 株(ST131 分離株 50 株を含む)のマススペクトルプロファイルから、ST131 のピークバイオマーカーを特定した。
結果
蛋白質の抽出を行った場合と行わない場合のいずれも、得られたマススペクトルプロファイルからモデルを用いて ST131 分離株を正確に同定することができた。
結論
MALDI-TOF MS を用いた ST131 分離株の迅速な同定は、検査室で容易に実施可能であり、拡散しやすい多剤耐性大腸菌を保菌する患者を対象とした感染制御策の標的を定めるうえで有用であると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ST131 に分類される大腸菌は薬剤耐性率が高く、日本においても分離頻度が高い。ST131 かどうか知るためには、MLST(multi locus sequence typing)と呼ばれる時間とお金を要する遺伝子検査を行わなければならないが、本論文はより簡単・短時間・低コストで行うことのできる質量分析(MALDI-TOF MS)を用いて ST131 かどうかを調べることができたとしている。ただし、実際には ST131 だからといって感染対策を変えたほうがよいかどうかは不明であり、検査技術の進歩に感染対策の実務が追いついていないのが現状である。
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