3 次病院における医療関連感染症発生率:3 年間の電子サーベイランスの結果

2015.05.31

Incidence of healthcare-associated infections in a tertiary care hospital: results from a three-year period of electronic surveillance


T. Puhto*, H. Syrjälä
*Oulu University Hospital, Finland
Journal of Hospital Infection (2015) 90, 46-51
背景
点有病率サーベイランスは医療関連感染症(HAI)のモニタリングに広く用いられている。発生率サーベイランスでは点有病率サーベイランスよりも正確な情報が得られるが、より多くの時間を要する。電子サーベイランスシステムによって、より広範な発生率サーベイランスが可能になると考えられる。
目的
フィンランドの 3 次病院における 2011 年から 2013 年までの 3 年間の HAI 発生率を、当病院の全電子データベースに接続している自動化発生率電子サーベイランスプログラムを用いて明らかにすること。
方法
プログラムを用いて、HAI 症例を抗菌薬投与開始から前向きに特定した。退院後に、これらの全症例の検証を手作業で行った。電子的方法による手術部位感染症の特定の感度を評価するために、心臓手術または全関節置換術を受けた全患者のカルテを後向きに評価した。
結果
研究期間中に合計 78,211 例の患者が 321,974 患者日にわたって病棟に入院し、抗菌薬治療開始は 29,694 件記録されていた。手作業の調査から、これらのうち 5,089 件(17.1%)が HAI に対する治療であることが判明した。病院全体(353 床)のサーベイランスを実施するために要した期間は合計 255 日であったが、これはほぼ看護師 1 名の 1 年間の労働時間に相当するものである。感度の評価により、手作業および電子的方法で特定された手術部位感染症の件数は同等であることが示された。HAI の 3 年発生率は 1,000 患者日あたり 15.8 であり、全退院患者の 4.9%であった。
結論
抗菌薬治療の開始に基づく継続的な発生率電子サーベイランスは、全病院的な HAI 発生率を評価するための実践的な方法であると考えられるが、この方法は依然として人的資源を必要とする。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
各病棟でトレーニングされた 2 名ずつのリンクナースが、抗菌薬が開始された症例をすべてレビューして医療関連感染かどうかを調べた結果、それに要した時間は延べ 255 日と、およそ 1 名の看護師の 1 年当たりの勤務時間であったとする結果。サーベイランスの完全電子化までの道はまだまだ遠いようだ。

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