集中治療室(ICU)サーベイランスと ICU の電子診療システムとの統合★
Integrating intensive care unit (ICU) surveillance into an ICU clinical care electronic system
J.S. Reilly*, J. McCoubrey, S. Cole, A. Khan, B. Cook
*NHS National Services Scotland, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 271-275
欧州の病院の診療部門の中では、医療関連感染症(HCAI)有病率は集中治療室(ICU)で最も高く、このため HCAI サーベイランスが優先的に実施されている。サーベイランスは効果的な感染予防・制御(IPC)プログラムの重要な要素であるが、臨床医や IPC チームの時間的な負担があまりにも大きく、質改善に従事する時間が限られる。この現状にかんがみて、各国から発表された文献を用いて電子サーベイランスの事例の調査を実施した。これらの研究からは、電子サーベイランスによってサーベイランスの妥当性が向上すること、サーベイランスに費やされる時間が短縮すること、および臨床的意思決定およびサーベイランスのための IPC 活動の改善機会がもたらされることが示唆された。スコットランドでは、ICU における HCAI サーベイランスシステムが、内部監査と診療の統合システムの一環として構築された。この技術インフラへの投資によってデータ収集の負担が軽減されたため、スコットランドの全 ICU の改善に目が向けられることになった。スコットランドの経験からは、ICU における HCAI サーベイランスを最適なものとするためには、複数の決定的に重要な項目が必要であることが示されている。それは、全国的に受け入れられる定義と方法、診療経過の追跡を容易にするための情報技術インフラへの国レベルでの投資、集中治療医によるサーベイランスの指揮、システムの信頼性を確保するためのパイロット研究および検証研究、ならびに国と地域のプログラムの戦略的統合である。これらの要素は、地域、国、および欧州レベルでのサーベイランスデータの改善に寄与しており、その結果、臨床的焦点がデータの収集プロセスではなく、データそのものに当てられるようになった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
サーベイランスにおけるデータ収集は地道な作業であり、感染対策チームの時間的負担が大きい。電子サーベイランスを利用することで、時間と労力が節約でき、その余剰部分を実際の改善へつなげられることを本論文は示唆している。スコットランドでは、VAP の 52%、BSI の 69%が予防可能であると見積もられており、電子サーベイランスによる実体の把握と感染対策への還元は重要である。日本においては、電子カルテの普及はめざましいものの、サーベイランスの電子データ収集に関する統一されたフォーマットはない。統一されたフォーマットにより、比較できるようになることが望まれる。
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