ノロウイルスのナーシングホームへの侵入経路および拡散のリスク因子:観察研究のシステマティックレビューおよびメタアナリシス
Norovirus introduction routes into nursing homes and risk factors for spread: a systematic review and meta-analysis of observational studies
M. Petrignani*, J. van Beek, G. Borsboom, J.H. Richardus, M. Koopmans
*Municipal Public Health Service Rotterdam-Rijnmond, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 163-178
ノロウイルスはナーシングホームに甚大な疾患および死亡をもたらしており、入居者および職員の発症率(attack rate)は高い。感染制御策の迅速な実施が重要である。本総説の目的は、ノロウイルスの感染源および侵入経路に関するエビデンス、および拡散に寄与する因子について評価することである。逆転写 PCR 法で確認されたアウトブレイクに関するピアレビューを受けた原著論文などを対象として、システマティックレビューを実施した。感染源、初発症例、伝播様式、発症率、アウトブレイク期間、およびリスク因子のデータを抽出した。発症率およびアウトブレイク期間を、侵入経路ごとに比較した。選択基準に基づいて、40 報のアウトブレイク報告および 18 報のサーベイランス研究を対象とした。ナーシングホームへのノロウイルスの侵入に関する系統的な情報はほとんど得られなかったが、アウトブレイク報告から得られたエビデンスにより、アウトブレイクは単独の初発症例から始まることが多いこと(57.5%)、入居者で発症率が高いこと(P = 0.02)が判明した。食物媒介性の侵入はアウトブレイク報告の7%に記載がみられ、その特徴は複数の初発症例が認められることであった。サーベイランス研究では、アウトブレイクのわずか 0.7%が食物媒介性と報告されており、28.5%はヒト-ヒト間伝播であり、70.8%は不明または記載がなかった。リスク因子分析から、伝播はベッドサイドケアおよび吐瀉物への曝露と関連することが示唆された。これらの知見から以下の推奨事項が導かれる。(i)アウトブレイク報告を標準化すること、(ii)早期発見および散発症例の隔離を改善すること、(iii)特に自立性が低い入居者を担当する職員の衛生状況を向上させること、および(iv)吐瀉物への曝露を回避するためのプロトコールを遵守すること。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ノロウイルス感染症は医療施設はもちろん、集団生活を行う施設において非常にインパクトの大きな感染症である。本システマティックレビューで得られた知見に新規性はないが、各施設での今後のノロウイルス対策立案の際の文献的根拠として活用できるであろう。
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