託児所における玩具の洗浄・消毒が感染症および微生物に及ぼす影響★

2015.02.27

Effect of cleaning and disinfection of toys on infectious diseases and micro-organisms in daycare nurseries


T. Ibfelt*, E.H. Engelund, A.C. Schultz, L.P. Andersen
*Copenhagen University Hospital (Rigshospitalet), Denmark
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 109-115
背景
託児所の小児が増えると、感染症が伝播する機会が増加する。病原体は、くしゃみ、咳、および接触によって小児から小児に直接的に、あるいは環境によって間接的に伝播すると考えられる。玩具は多量の病原体が付着した媒介物の 1 つであるが、疾患の伝播における役割については不明である。
目的
託児所環境での玩具の洗浄・消毒によって、病欠および病原微生物量が減少するかどうかを明らかにすること。
方法
託児所 12 施設(小児 587 名を保育)を介入群と対照群にランダムに割り付けた。介入として、洗浄業者が玩具およびリネン類の洗浄・消毒を 2 週ごとに 3 か月間実施した。介入の導入前後に、両群の小児の病欠状況および原因を記録した。各託児所で 10 か所からサンプル採取し、細菌および呼吸器ウイルスの調査を行った。
結果
環境中に呼吸器ウイルスの DNA/RNA は広範に存在していたが、病原菌はわずかしか認められなかった。介入群では、対照群と比較してアデノウイルス(オッズ比[OR]2.4、95%信頼区間[CI]1.1 ~ 5.0)、ライノウイルス(OR 5.3、95%CI 2.3 ~ 12.4)、および RS ウイルス(OR 4.1、95%CI 1.5 ~ 11.2)の検出が減少したが、託児所の病欠および疾患パターンには影響がなかった。
結論
託児所での 2 週ごとの玩具の洗浄・消毒によって微生物量は減少し得るが、小児の病欠は減少しないと考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
託児所の環境はしばしば多数のウイルスや細菌に汚染されていることが予測されるが、本論文の問題点は、①ウイルスの遺伝子の存在と感染性とは必ずしも一致しないであろうし、② 2 週間に 1 度の消毒の頻度は少なすぎる点である。日々の日常的環境整備は必要であり、特に託児所での玩具については清潔を維持することは必要であろう。有意差がでなかった理由は、このあたりにあるのではないであろうか。また、ノロウイルス胃腸炎などの突発的な感染症発生時の環境整備とは区別して考える必要があり、その際の対応策も考えておくべきである。

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