環境表面に付着する病原菌とそのバイオフィルムと消毒薬感受性:病院の清掃・消毒における対応★★

2015.01.30

Surface-attached cells, biofilms and biocide susceptibility: implications for hospital cleaning and disinfection


J.A. Otter*, K. Vickery, J.T. Walker, E. deLancey Pulcini, P. Stoodley, S.D. Goldenberg, J.A.G. Salkeld, J. Chewins, S. Yezli, J.D. Edgeworth
*King’s College London and Guy’s and St. Thomas’ NHS Foundation Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 16-27
微生物は身近な表面に付着し、直ちにバイオフィルムを形成する性質があるため、医療環境で問題となる。バイオフィルムはこれまで、濡れているまたは湿潤な表面、例えば留置医療器材や医療器具のチューブとの関連が指摘されてきた。しかし、微生物は病院の乾いた表面上で乾燥状態にあっても長期間生存し、最近はバイオフィルムも病院の乾いた表面上で検出されることが報告されている。表面に付着した微生物やバイオフィルム内の微生物は、殺生物剤、抗菌薬、および物理的ストレスに対する感受性が低い。このような表面付着および/またはバイオフィルム形成という観点から、栄養細菌がいかにして表面上で数週間から数か月(またはさらに長期間)にわたり生存するのか、どのように環境サンプリングでの微生物回収を困難にしているのか、また耐性遺伝子の水平移動が生じる細菌混合集団をどのように生じさせているかについて、説明することができると考えられる。既存の洗浄剤や消毒薬のバイオフィルム破壊能には、それらの製剤の病院環境での有効性を評価するうえで重要かつこれまで認識されていなかった意義があると考えられ、検査基準に含めるべきである。病院の乾いた表面上での微生物の特性や生理学、特にバイオフィルムの存在率や成分を明らかにするために、さらなる研究が必要である。これにより、病院の清掃・消毒のための新たな方法(例えば微生物の付着が減少し、微生物の脱落を促進する新規素材による表面)や、表面付着細菌に対する殺生物剤の活性を向上させる方法(例えばバクテリオファージや抗菌ペプチドなど)の情報がもたらされると考えられる。病院の表面の環境汚染に対処するための今後の戦略では、バイオフィルムも含めて表面付着細菌の存在を考慮するべきである。
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監訳者コメント
近年耐性菌対策の一環で院内環境の浄化の重要性が指摘されている。これらの多くの耐性菌はバイオフィルムを産生することから、環境汚染の対策としてバイオフィルム産生菌に対して効力の高い環境消毒薬の適用が望まれる。

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*French Society for Hospital Hygiene, France
Journal of Hospital Infection (2020)105, 414-418

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