理髪師および剃刀が原因と考えられたセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)術後感染症のアウトブレイク
Outbreak of Serratia marcescens postoperative infection traced to barbers and razors
P. Leng*, W.L. Huang, T. He, Y.Z. Wang, H.N. Zhang
*Affiliated Hospital of Qingdao University, China
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 46-50
背景
2,640 床の病院の神経外科病棟および脊椎外科病棟で 2012 年 12 月 26 日から 2013 年 6 月 5 日に、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)による術後感染症が 14 例に認められた。
目的
アウトブレイク発生源の調査、リスク因子の特定、および感染制御対策の実施。
方法
医療従事者および想定される環境感染源からの培養を実施した。S. marcescens 分離株の特性を抗菌薬感受性試験およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法により評価した。後向き症例対照研究を実施し、リスク因子を特定した。
結果
患者 14 例にアウトブレイクが発生し、このうち 5 例は 1 回以上の外科的処置が必要となった。脳脊髄液、脳組織、痰、およびその他の分泌物から S. marcescens が分離された。S. marcescens は理髪師 2 名の手指および剃刀から採取したサンプルでも培養陽性であった。この 2 名の理髪師への曝露(オッズ比[OR]78.0、P < 0.0001)および創部ドレナージ(OR 4.889、P = 0.028)がリスク因子であり、これらの理髪師による術前の剃毛が唯一の独立リスク因子であった(OR 78.0、P < 0.0001)。患者、理髪師、および剃刀からの S. marcescens 分離株は PFGE および抗菌薬感受性パターンでは区別できなかった。関係した理髪師の休職、感染制御手順の大幅な強化、および再教育の後にアウトブレイクは終息した。
結論
これらの結果は、術前のウェットシェービングの術後感染症リスクを明示するものである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
術前の理髪師の剃毛が原因と考えられた S. marcescens による術後感染アウトブレイクの報告である。原因となった理髪師は退職し、新たな理髪師が雇われ、手指衛生・手袋装着のうえ、剃毛を行い、術前日に術野を丁寧にヨードで消毒をすることでアウトブレイクは終息したとあるのだが、やはり中国では理髪師による剃毛そのものを廃止することは難しいのだろうか。
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