手指衛生モニタリング技術:有効性のシステマティックレビュー★

2015.01.30

Hand hygiene monitoring technology: a systematic review of efficacy


J.A. Srigley*, M. Gardam, G. Fernie, D. Lightfoot, G. Lebovic, M.P. Muller
*Hamilton Health Sciences, Canada
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 51-60
電子的モニタリングシステム(EMS)および映像モニタリングシステム(VMS)は、フィードバックやリアルタイムの注意喚起を行うことにより、またホーソン効果を介して、手指衛生を改善すると考えられる。今回のシステマティックレビューの目的は、EMS/VMS による手指衛生改善効果、または医療関連感染(HCAI)の発生率低下効果を評価することである。手指衛生に関する何らかのアウトカムまたは HCAI 発生率の評価を実施している実験的研究および準実験的研究を対象とした。対象とした研究のうち、7 件はシステムを用いて評価した遵守状況(system-defined compliance;SDC)(6 件)または手指衛生イベント発生率(1 件)をアウトカムとしていた。SDC はすべてのシステムで異なっていた。単一の病棟での研究がほとんど(6 件)であった。音声ガイダンス付きの EMS を評価した 2 件の非対照前後比較研究では、SDC の改善が認められたが、バイアスのリスクが高かった。集計結果のフィードバックを行う VMS を評価した 2 件の非対照時系列分析では、SDC の大幅かつ持続的な改善が認められ、バイアスのリスクは中等度であった。集計結果のフィードバックを行う EMS を評価した非ランダム化対照試験 1 件では手指衛生頻度の差は認められなかったが、バイアスのリスクが高かった。個人ごとのフィードバックおよびリアルタイムの注意喚起を行う EMS を評価した研究は 2 件であった。バイアスリスクの高い前後比較研究では、SDC の改善がみられた。バイアスリスクの低いランダム化試験では介入群のほうが SDC が 6.8%高かったが、その原因の一部は対照群の SDC 低下であった。結論として、全体的に研究の質は低かった。バイアスリスクの最も低い研究では、SDC 改善はわずかであった。バイアスリスクが中等度の VMS の研究では、迅速かつ持続的な SDC 改善が認められた。EMS/VMS を推奨するにはデータは不十分であった。今後の研究では、対照群を設定し、システムに依存しない、検証を受けた手指衛生評価法を用いる強固な研究デザインによる VMS の試験を重視するべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
手洗いおよび手指消毒などの手指衛生の遵守率(コンプライアンス)の改善による医療施設内感染の減少は、永遠の課題である。WHO が提唱した「手指衛生の5つの場面」では、「いつ、どんな場面で手指衛生をするのか?」が明確化され、世界中でこの提唱に基づき手指衛生遵守率向上への多くの試みがなされている。遵守率の評価には、直接観察法が現時点では最も信頼性が高いが、訓練された評価者による標準的な評価ができないとその信頼性は低くなる。また、常時観察ができないことも欠点である。それに対して、電子的モニタリング(EMS)や映像モニタリング(VMS)は、常時監視ができ、かつ客観的に判断できるという利点をもつが、これまでの報告では研究デザイン、アウトカムの設定等に問題があり、EMS と VMS の効果を証明するにはエビデンスとして不十分であるとしている。今後、VMS の器材は多数開発されてくることが予測されるが、有効性を証明するためには適切な研究デザインを設定する必要があり、また解決策についても論じている。

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