レミフェンタニルによる麻酔は術後の手術部位感染症発生率を上昇させる★★
Remifentanil-based anaesthesia increases the incidence of postoperative surgical site infection
T. Inagi*, M. Suzuki, M. Osumi, H. Bito
*Nippon Medical School, Japan
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 61-68
背景
大腸手術後の手術部位感染症(SSI)は術後死亡の主要な原因である。オピオイドは白血球に発現したμオピオイド受容体の活性化およびオピオイド離脱を介して免疫抑制を引き起こす。手術中にレミフェンタニルとして投与される高用量オピオイドが免疫抑制を引き起こし、SSI の発生をもたらす可能性がある。
目的
本研究の目的は、SSI 発生に対するレミフェンタニルの影響を調べることである。
方法
2009 年 1 月から 2012 年 12 月に待機的大腸手術を施行した成人患者(286 例)を、米国疾病対策センター(CDC)のガイドラインに従って前向きに調査した。51 例を除外し、235 例を対象として傾向スコアマッチングを行った。SSI の選択の影響を減少させるために、レミフェンタニルで麻酔維持した患者とフェンタニルで麻酔維持した患者の傾向スコアのペアワイズマッチングを行った。
結果
傾向スコアマッチング前に SSI が発生した患者数は、レミフェンタニル麻酔後のほうがフェンタニル麻酔後より多かった(レミフェンタニル群 11.6%[146 例中 17 例]、フェンタニル群 3.4%[89 例中 3 例]、P = 0.03)。傾向スコアマッチングによりレミフェンタニルまたはフェンタニル麻酔を受けた患者ペア 61 組を作り、術前の患者特性のいくつかのバイアスを補正した。傾向スコアマッチング後の SSI 発生患者数も、レミフェンタニル麻酔後のほうがフェンタニル麻酔後より多かった(レミフェンタニル群 16.4%[61 例中 10 例]、フェンタニル群 3.3%[61 例中 2 例]、P = 0.029)。
結論
レミフェンタニル麻酔により SSI 発生率が上昇した。理由として、オピオイドによる免疫抑制あるいはオピオイド離脱による免疫抑制が考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
レミフェンタニルは麻酔導入および覚醒が早いことから、使用機会が非常に多くなった麻酔薬である。SSI の発生率が高い大腸手術においては、これまでも多くのリスク因子が同定されてきたが、今回各交絡因子を補正しても本剤が SSI の発生率を増加させている可能性が指摘されたことは、非常に興味深い。レミフェンタニル群では術後の好中球数が低いことも判明しており、使用中の内分泌・糖代謝の変化とあわせ、免疫低下に関する詳細な解析が望まれる。
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