手指乾燥法の微生物学的比較評価:環境、使用者、および第三者の汚染の可能性★

2014.12.31

Microbiological comparison of hand-drying methods: the potential for contamination of the environment, user, and bystander


E.L. Best*, P. Parnell, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 199-206
背景
病原体伝播を予防するためには効果的な手指乾燥が重要であるが、環境および使用者の汚染に対する影響が最も少ない乾燥法に関する知見はわずかである。
目的
普及している 3 種類の手指乾燥法(ジェット空気乾燥、温風乾燥、およびペーパータオル)による環境、使用者、および第三者に対する汚染状況を比較すること。
方法
洗浄が不十分な汚染手指のシミュレーションとして手指に乳酸菌を塗布し、乾燥させた。本研究では 120 回の空気サンプル採取試験(試験 60 回、対照 60 回)を行い、乾燥作業位置の近傍および 1 m の距離の 2 か所で評価を実施した。別の試験として、飛沫の飛散を視覚化するために手指に塗料を塗布した。
結果
手指乾燥作業位置の近傍での空気中細菌数は、ジェット空気乾燥(70.7 cfu)は温風乾燥機(15.7 cfu)より 4.5 倍多く(P = 0.001)、ペーパータオル(2.6 cfu)より 27 倍多かった(P < 0.001)。ペーパータオルによる乾燥と温風乾燥との空気中細菌数の比較でも、有意差が認められた(P = 0.001)。1 m の距離でも細菌数には同様のパターンが認められた。視覚化実験では、飛沫の拡散はジェット空気乾燥で最も多いことが示された。
結論
ジェット空気乾燥および温風乾燥では、手指乾燥時にエアロゾル化する細菌数が多い。これらの結果から、空気乾燥は、微生物の空気伝播による交差汚染を環境および手洗い所の第三者にもたらす可能性があるため、医療環境では不適切であることが示唆された。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
手洗い後の空気乾燥は医療施設では不適切であることを明らかにした論文である。と同時に、たとえペーパータオル使用であったとしても、不十分な手洗いが手洗い場の周囲を汚染することが一目でわかる写真は、とてもインパクトがあった。

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