ロンドン北部の新生児室のアウトブレイク調査:原因およびリスク因子の特定★
Survey of neonatal unit outbreaks in North London: identifying causes and risk factors
K. Williams*, S. Hopkins, D. Turbitt, C. Seng, B. Cookson, B.C. Patel, R.J. Manuel
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 149-155
背景
ロンドン北部の Health Protection Team(HPT)で新生児室における複数のアウトブレイクが報告されたことを受けて、本調査を実施した。
目的
アウトブレイクの多様性、想定される感染源および寄与因子、ならびに使用した調査手法および実施した制御策を明らかにすること。
方法
2010 年 1 月から 2011 月 2 月に報告された新生児室の全アウトブレイクの情報を、構造化(標準化)した質問票を用いて HPT データベースから収集した。
結果
14 か月間に 7 病院で 10 件のアウトブレイクが特定された。アウトブレイクの内訳は、1 件がパラインフルエンザ、7 件が黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(このうち 6 件はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌[MRSA])、および 2 件がグラム陰性菌によるものであった。MRSA アウトブレイクの想定される伝播源として、医療従事者を介する伝播(2 件)および母子感染に続く、医療従事者を介した伝播(3 件)が特定された。グラム陰性菌によるアウトブレイクの 1 件では、環境からの伝播に続いて、医療従事者による伝播が生じていた。実施した介入は、患者のスクリーニングと清掃強化(10 件)、感染児の隔離・コホーティング(9 件)、バリアナーシング(6 件)、職員の移動制限(5 件)、手指衛生の監視(4 件)、職員のスクリーニング(4 件)、家族の接触者スクリーニング(3 件)、および環境からの培養(3 件)などであった。想定される寄与因子は、不適切な職員配置、乱雑な病室、共同の搾乳器具の不適切な滅菌、および MRSA 陽性者の不十分なフォローアップなどであった。
結論
本調査により、ロンドン北部の新生児室のアウトブレイクには多様性が認められることが判明し、アウトブレイク制御には多角的な手法が重要であることが示された。これらのデータは、新生児室のアウトブレイクの予防、制御、および報告に関する臨床的基準の策定、ならびに新生児室におけるベストプラクティスを目指した指針の策定に有用であると考える。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
新生児室の感染対策の重要性と、集団発生が生じた場合の制御の難しさは言うを待たない。多数の新生児室と集団発生を含んだ今回の報告は、集団発生への介入と効果ならびに寄与因子を明らかにするのみならず、解析手法まで踏み込んだ点も大きく評価できる。さらには個々の例において、多角的な対策をどのように有機的に組み合わせ、それぞれ徹底していけるかも課題となるが、この課題の克服につながる研究ともいえる。
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