手指衛生遵守に関する視角的フィードバックを即時に行う接触モニタリングシステムの効果★
Effect of a contact monitoring system with immediate visual feedback on hand hygiene compliance
S.J. Storey*, G. FitzGerald, G. Moore, E. Knights, S. Atkinson, S. Smith, O. Freeman, P. Cryer, A.P.R. Wilson
*University College London Hospitals, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 84-88
背景
これまで手指衛生遵守のモニタリングは、バイアスがかかりやすく時間と場所の制約が大きい視覚的方法によって行われてきた。感染制御および手指衛生実践の管理には、自動モニタリングがより効果的であると考えられる。
目的
手指衛生の自動接触モニタリングシステムの精度と受容性を明らかにすること。
方法
加工した ID バッジ、ベッドサイドの家具、シンク、およびアルコールジェルディスペンサーからなるモニタリング装置を、3 病棟の 55 のベッドに設置した。バッジはアルコール蒸気の検出が可能であり、皮膚に近接して装着した(制服の上から)。すべてのデバイスを Wi-Fi で接続した。患者に近づく際の職員の手指衛生実践状況を、バッジに設置した点灯システムによって職員および患者に即時にフィードバックするとともに、遵守状況を自動的に記録した。即時フィードバック実施後 2 週間は視覚的フィードバックを行わなかった。その後、赤色光と緑色光によるフィードバックを 10 日間実施し、次いで病棟へ遡及的(レトロスペクティブ)にフィードバックを行った。別途に観察者 1 名が手指衛生の検証を行った。
結果
積極的な即時フィードバック実施期間中に、手指衛生遵守率は 21%(手指衛生機会 1,665 回)から 66%(同 3,672 回)へ増加した。病棟への遡及的フィードバック実施期間中は、遵守率は低下した。6 名(26%)の職員が、バッジが重過ぎる、または病棟に終日いるわけではないという理由でバッジを装着しなかった。手指衛生を実施しなかった職員に対して注意をすると述べた患者は、30 例中 3 例のみであった。
結論
即時フィードバックを行う自動接触モニタリング法は、手指衛生遵守率の向上に効果があったが、遡及的フィードバックでは遵守率低下を防止することはできなかった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
手指衛生の遵守率を向上させるために、どのようにしたら意識や行動を変えられるか、何を工夫できるかは、感染対策上変わらない大きな課題である。遵守状況をリアルタイムにチェックし、その結果をすぐ本人に知らせることができたら、遵守率はどう変わるのか―本研究で得られた実践結果は非常に興味深い。
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