手指消毒の新規評価法により術前のアルコール/クロルヘキシジン製剤による擦式手指消毒の効果は従来のスクラブ法と同等であることが示された★

2014.10.31

New method for assessing hand disinfection shows that pre-operative alcohol/chlorhexidine rub is as effective as a traditional surgical scrub


J.D. Howard*, C. Jowett, J. Faoagali, B. McKenzie
*University of Queensland Southern Clinical School, Australia
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 78-83
背景
クロルヘキシジンアルコール溶液による擦式手指消毒の微生物汚染除去能は、従来のクロルヘキシジン水溶液を用いたスクラブ法と同等であることが複数の研究から示されている。しかしこれらの研究は、実際の手術室環境には当てはまらない可能性があるという方法論的な欠陥があると考えられる。そこで、手術室で実際の業務にあたる職員を協力者として、日常的な手術室環境で製剤の比較を行う方法を開発した。
目的
クロルヘキシジンアルコール溶液による擦式手指消毒の効果は、従来のスクラブ法と同等であるかどうかを新規評価法を用いて明らかにすること。
方法
麻酔医 20 名のベースライン時の細菌数をグローブジュース法により測定した。次いで片方ずつ滅菌グローブに交換したが、一方の手指は 4%クロルヘキシジン水溶液で 3 分間のスクラブを行い、もう一方は 70%イソプロピルアルコール/0.5%クロルヘキシジン溶液で 60 秒間の擦式手指消毒を行った。30 分後に、それぞれの手指の残存細菌数をグローブジュース法により測定した。これらの細菌数を log10 値に変換し、ベースライン時の左右の手指の細菌数と比較するとともに、各溶液の効果を比較した。
結果
ベースライン時の細菌数平均値(± 標準偏差[SD])は、左手 4.42 ± 0.81 log10、右手 4.64 ± 0.60 log10 であった(P > 0.05)。ベースラインからの細菌数減少の平均値(± SD)は、4%クロルヘキシジン 1.45 ± 0.50 log10、クロルヘキシジンアルコール溶液 2.01 ± 0.98 log10 であった(P > 0.05)。
結論
30 分後の比較で、クロルヘキシジンアルコール溶液による擦式手指消毒の効果は、従来のスクラブ法と同等であることが示された。この研究は、業務環境で作業を行う麻酔科医の集団を対象として実施した点がこれまでの研究とは異なっている。今回の McKenzie 法を用いると、ベースライン評価と試験の評価を同一被験者で同時に行うことができ、各被験者自身が対照となる。McKenzie 法は消毒液の比較法として、標準的な方法よりも臨床的重要性が高い。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
手指消毒剤の評価方法としてこれまで米国と欧州の 2 つの方法があったが、評価に 2 週間以上の期間が必要、評価前に石けんで手洗い後をベースラインにするなど、実際の現場での評価を反映していない可能性があった。著者らは同一人で片手ずつ異なる消毒剤で消毒し、グローブジュース法により細菌数を測定する新たな評価方法として McKenzie 法を考案し、4%クロルヘキシジン(CHG)によるスクラブ法と 0.5%CHG + 70%イソプロピルアルコールによる擦式手指消毒法を比較し、その細菌減少効果が同等であることを報告している。本法は評価時間が 1 人あたり 45 分程度と短時間であり、指先のみの培養ではなく手指全体の細菌数を測定している点が特徴である。本論文では、「30 分以内の手技」に関しては、従来のスクラブ法と擦式手指消毒法とで、細菌学的に同等であることを証明している。

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