心臓手術後の縦隔炎のリスク因子:肥満の管理の重要性

2014.10.31

Risk factors for mediastinitis following cardiac surgery: the importance of managing obesity


S.M. Rehman*, O. Elzain, J. Mitchell, B. Shine, I.C.J.W. Bowler, R. Sayeed, S. Westaby, C. Ratnatunga
*John Radcliffe Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 96-102
背景
縦隔炎は心臓手術の深刻な合併症である。これまでの研究の多くは小規模集団の観察であり、後向きデザインを採用しており、縦隔炎の定義が一貫していない。
目的
縦隔炎のリスク因子と、その発生を最小限にする戦略を明らかにすること。
方法
2003 年 10 月から 2009 年 2 月に心臓手術を受けた成人患者 4,883 例を対象とした前向きコホート研究を実施し、術前および術中のリスク因子、病因微生物、再入院の必要性、入院期間、および死亡率を、縦隔炎の有無別に比較した。
結果
患者 90 例(1.8%)が縦隔炎と診断された。このうち 75 例で病因微生物が特定された。最も高頻度に分離されたのは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)であった(30 件、このうち 15 件はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌[MRSA])。単変量解析により特定された縦隔炎に関連する術前因子は、年齢、体格指数(BMI)、糖尿病、修正ロジスティック European System for Cardiac Operative Risk Evaluation スコア、緊急入院、および術前の長期入院であった(P < 0.05)。また縦隔炎に関連する術中因子は、冠動脈バイパス移植と大動脈弁置換の同時手術、長時間の大動脈遮断、および長時間の心肺バイパスであった(P < 0.005)。多変量解析により縦隔炎との関連が認められた因子は、BMI 高値、冠動脈バイパス移植と大動脈弁置換の同時手術、および高齢であった(P < 0.05)。縦隔炎は再入院、入院期間延長、および長期生存率低下と関連していた(P < 0.05)。
結論
縦隔炎は短期的アウトカム(再入院、入院期間)の悪化および長期生存率低下と関連していた。肥満は、縦隔炎の改善可能な唯一の術前リスク因子である。待機的手術前の減量プログラムによって、このリスクの低下を図ることができると考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
心臓手術後の縦隔炎のリスク因子について検討した論文である。過去の知見として、患者に起因するリスク因子としては、糖尿病(術後の高血糖)、肥満、喫煙等がある。この論文でも改めて、肥満は縦隔炎の改善可能な唯一の術前リスク因子であることが指摘されているが、このことは、術前の体重コントロールが可能であっても困難であることを意味しているのであろうか。

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