英国におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の医原性伝播リスクの管理

2014.09.30

Managing the risk of iatrogenic transmission of Creutzfeldte-Jakob disease in the UK


V. Hall*, D. Brookes, L. Nacul, O.N. Gill, N. Connora on behalf of the CJD Incidents Panel
*Public Health England, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 22-27
背景
英国では牛海綿状脳症(BSE)および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の出現を受けて医原性伝播が懸念されており、そのリスク管理には独自のアプローチを採用している。
目的
CJD 事例の管理、および医原性伝播の減少戦略として実施した「高リスク」者への通知について報告・考察すること。
方法
医原性 CJD の伝播、CJD インシデント委員会(CJD Incidents Panel)の役割、2012 年中旬までに報告された CJD インシデントの件数および「高リスク」者数とそれらの特性について述べる。
結果
英国の CJD 症例 77 例が医原性伝播によるものである可能性が高く、その曝露の内訳はヒト由来成長ホルモン 64 例、硬膜移植 8 例、輸血 4 例、および血漿製剤 1 例であった。委員会は伝播抑制を目的として 490 件のインシデントを調査し、遡及調査、血液・血漿製剤の回収、および外科用器具の隔離・廃棄を勧告した。さらに、委員会の勧告に基づき無症状者約 6,000 名に CJD のリスクが高いことを通知し、公衆衛生予防策に従うよう要請した。
結論
CJD 医原性伝播の低減戦略は、科学的な確実性が欠如した状況下で策定されてきた。伝播事例が少ないことは、インシデントに関連する曝露に伴う伝播リスクはごくわずかであることを示唆していると考えられ、また、CJD の潜伏期間が長いことや不顕性感染という特性を考慮すると、感染がまだ発生していない可能性も未検出である可能性も想定できる。より確実な感染率推定方法、スクリーニング検査、または外科用器具の汚染除去法の改善などの科学的な進歩によって、今後のリスク管理は変化していくと考えられる。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
CJD の患者発生の経年的な変化をみると、弧発型についてはいまだにほぼ横ばいなのに対して、変異型の症例は劇的に減少しており、国策としての取り組みの効果が現れている。CJD 患者に使用した医療器具の再生処理方法はどれも非現実的なもので、かつ、これらの処理による滅菌法に関するエビデンスの質は低いものがほとんどであることから、課題は山積している。

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