2003 年の SARS から 2009 年の H1N1 まで:次のパンデミックに備えるための台湾からの教訓★

2014.08.31

From SARS in 2003 to H1N1 in 2009: lessons learned from Taiwan in preparation for the next pandemic


M.-Y. Yen*, A.W.-H. Chiu, J. Schwartz, C.-C. King, Y.E. Lin, S.-C. Chang, D. Armstrong, P.-R. Hsueh
*Yang-Ming University School of Medicine, Taiwan
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 185-193
将来起こり得る鳥インフルエンザ(H5N1)、鳥インフルエンザ(H7N9)、または中東呼吸器症候群(MERS)のパンデミックに備えて、および 2003 年の重症急性呼吸器症候群(SARS)への対応を中心として、台湾の台北市はパンデミック制御のための広範な新規戦略を策定してきた。これらの戦略は、2009 年のインフルエンザ(H1N1)アウトブレイク時に検証を受けることとなった。本稿では、さらに広い範囲の国際的な公衆衛生コミュニティにとって重要な教訓を導き出すことを目的として、近年の複数のパンデミックの経験を契機とした台北におけるパンデミックへの備えについて評価する。パンデミックへの対応と制御に関する台湾および台北の疾病対策センター(Centers for Disease Control;CDC)のデータを利用し、特に院内通行管理バンドルを重視した院内介入・医学的介入に詳しく触れつつ、両行政府によるパンデミック対応方針の変更の効果を継時的に評価した。SARS およびインフルエンザ(H1N1)2009 は、台湾および台北の CDC が将来のパンデミックに対する戦略の継続的な改善・修正を推進することとなった。パンデミックの対応・制御のためのこれらの新規戦略は、これまでパンデミックの暫定的な封じ込め・制御に大いに有効であったが、効果的なワクチン接種プログラムの開発・実施については依然として進行中である。このような事例に関する台北の経験が示すように、中等度または重度のパンデミックインフルエンザの軽減を図る際には、院内通行管理バンドルと院内介入・医学的介入の併用や、学校・地域を対象とした介入などからなる段階的プロセスによって、ワクチン開発を待つ間の効果的な暫定的対応が可能になる。ワクチン開発が成功した折には、パンデミック制御効果を最大化するために、脆弱者集団、医療従事者、および学童に対してワクチンの優先的分配を行うべきである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
台湾 CDC が 2003 年の SARS、2009 年のインフルエンザ(H1N1)に対して実施した対応策をレビュー、アセスメントし、今後の対策を検討した論文である。本論文で紹介されている活動や、アセスメントのプロセスは、国・地域単位、医療施設単位というふうに規模が異なっても、われわれが今後の備えとして対策を考えるときの参考になると思われる。また、本文中に触れられている院内通行管理バンドル(Traffic Control Bundling)については以前の論文にその詳細が紹介されている。このようなバンドルはパンデミックのときに有効であると思われるが、確実な実施のためには普段から状況を想定した訓練を行う必要がある。
監訳者注:
院内通行管理バンドル(Traffic Control Bundling):本誌既報参照。

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*Cell and Tissue Bank, Centro de Transfusión de la Comunidad Valenciana, Spain

 

Journal of Hospital Infection (2021) 112, 49-53

 

 

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