欧州の病院におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)血流感染の予防:病院の方針を超えた実践★

2014.08.31

Prevention of meticillin-resistant Staphylococcus aureus bloodstream infections in European hospitals: moving beyond policies


M.A. Borg*, M. Hulscher, E.A. Scicluna, J. Richards, J.-M. Azanowsky, D. Xuereb, A. Huis, M.L. Moro, H.C. Maltezou, U. Frank
*Mater Dei Hospital and University of Malta, Malta
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 203-211
背景
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)菌血症は感染制御および抗菌薬適正使用の改善によって減少し得ることを示すエビデンスが存在する。
目的
欧州の病院での感染制御および抗菌薬適正使用の実施状況について調査すること、および MRSA 保菌率の低下に関連する取り組みを特定すること。
方法
欧州の病院に対して、院内サーベイランス、手指衛生、静脈内デバイスの管理、入院時スクリーニング、隔離策、抗菌薬処方、病院の人口統計学的特性、および 2010 年における血液培養による MRSA 分離に関するオンライン質問票を送付した。
結果
欧州 29 か国の病院から、合計 269 件の回答があった。MRSA 保菌率低値と有意に関連する因子は、新規発生に関するサーベイランスの実施、根本原因分析の実施、手指衛生の必要性に関する義務的研修、手指衛生不遵守の継続に関する責任の評価、および抗菌薬処方時の多職種チームの関与であった。MRSA 保菌率別の患者群の間に、静脈内カテーテル挿入方針および管理方針の存在に関するばらつきはみられなかった。しかし、保菌率が低い病院では、末梢および中心静脈カテーテルの挿入と管理に関する能力評価プログラムを多く有していた。英国とアイルランドの病院では感染制御および抗菌薬適正使用の実施率が高く、これらは MRSA 保菌率低値と有意に関連していたが、南欧の病院では実施率が低かった。重回帰分析により MRSA 保菌率低値との有意な関連が認められた因子は、高リスク患者の隔離、根本原因分析の実施、看護師を対象とした手指衛生に関する義務的研修、および微生物専門家と感染症専門医を交えた共同の病棟回診であった。
結論
医療従事者の責任評価、当事者意識、チームワーク、および能力評価の浸透を含む感染制御および抗菌薬適正使用に関する積極的な取り組みは、MRSA 保菌指標の改善との関連が認められた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染制御にウルトラ C はない、ということを再認識させられる論文である。中でも、根本原因分析、義務的研修の実施、専門家による病棟回診などの積極的な取り組みが、低い MRSA 検出率への鍵となることが結果として示されたことは興味深い。

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