侵襲性 A 群レンサ球菌感染症アウトブレイク:耳鼻咽喉科での汚染された病室カーテンおよび交差感染★
Outbreak of invasive group A streptococcus infection: contaminated patient curtains and cross-infection on an ear, nose and throat ward
N. Mahida*, A. Beal, D. Trigg, N. Vaughan, T. Boswell
*Nottingham University Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 141-144
背景
医療環境で A 群レンサ球菌(GAS)感染症のアウトブレイクが発生することがあり、これまでに外科や産科婦人科、熱傷部門から報告がある。環境がリザーバとして働き、汚染器具を介して伝播が促進すると考えられる。
目的
3次紹介病院の耳鼻咽喉科で発生した医療関連 GAS 感染症アウトブレイクに関し、調査結果および実際に行われた制御について報告すること。
方法
咽頭癌患者 2 例が、気管切開部の蜂巣炎を伴う侵襲性 GAS 感染症(菌血症)を 48 時間以内に発症した。アウトブレイク対策チームが GAS 症例の後向きレビュー、前向きの症例発見、医療従事者を対象としたスクリーニング、および病室カーテンからのサンプル採取などの調査を行った。感染対策として症例の隔離、塩素系消毒薬による徹底的な定期的清掃、および患者に使用される器具の過酸化水素による汚染除去などを直ちに実施した。
結果
前向きの患者スクリーニングにより、気管切開創のスワブから GAS 保菌患者がさらに 1 例特定された。職員のスクリーニングでは、アウトブレイク中に GAS を獲得した医療従事者 1 例が特定され、本職員はその後、咽頭炎を発症した。環境のサンプル採取では、病室カーテン 34 枚中 10 枚が GAS で汚染されていることが判明し、すべての分離株が emm-1 型に分類された。
結論
本稿は、病室カーテンが GAS の交差伝播の潜在的な汚染源であることを確認した最初のアウトブレイク報告であり、手指衛生およびカーテンの頻繁な洗濯の意義を示すものである。この報告に基づいて、GAS 感染症アウトブレイク時には汚染除去強化策の一環としてすべての病室カーテンを交換することが推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
病室のカーテンは様々な微生物に汚染されていることが知られ、これまでにも黄色ブドウ球菌、Clostridium difficile、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの報告がある。本事例では耳鼻咽喉科の病棟の入院患者・スタッフに GAS 感染症が生じ、全病室のカーテンを調査したところ、特に気管切開部に感染を生じた認知症患者の病室のカーテンからは最も多くの GAS が検出された。GAS 感染症を多く経験する診療部門であること、飛沫感染・接触感染を容易に生じ得る微生物であること、カーテンは多くの患者・スタッフが日常的に接触する代表的な場所であることがアウトブレイクの要因と考えられる。感染の媒介となるリスクに対する対応を考えるうえで貴重な報告といえる。
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