ワークフロー統合ソフトウェアを用いて構築したデータウェアハウスの解析による集中治療室のオーダーメードの感染症サーベイランスシステムの妥当性分析★
Validity analysis of a unique infection surveillance system in the intensive care unit by analysis of a data warehouse built through a workflow-integrated software application
L. De Bus*, G. Diet, B. Gadeyne, I. Leroux-Roels, G. Claeys, K. Steurbaut, D. Benoit, F. De Turck, J. Decruyenaere, P. Depuydt
*Ghent University Hospital, Belgium
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 159-164
背景
当集中治療室(ICU)では、意思決定支援コンピュータープログラムを開発・導入している。これによって感染に関連するすべての患者データを概観することが可能であり、また ICU の医師が回診中に臨床情報を追加できるため、データベースを前向きに構築することができる。
目的
本データベースの解析によって、ICU 感染に関するコンピューター支援サーベイランスの妥当性を評価すること。
方法
36 床の内科・外科 ICU で 4 か月間にわたり、ICU 獲得型の呼吸器感染症(RTI)、血流感染症(BSI)、および尿路感染症(UTI)を対象としてコンピューター支援サーベイランスと文書ベースの前向きサーベイランスの比較を行った。第三者委員会がコンピューター支援サーベイランスと文書ベースの前向きサーベイランスで一致しない症例のデータを精査した。
結果
876 件の ICU 入室から、文書ベースの前向きサーベイランスにより 89 件の ICU 感染症(BSI 13 件、UTI 18 件、RTI 58 件)、コンピューター支援サーベイランスにより 90 件の ICU 感染症(BSI 14 件、UTI 17 件、RTI 59 件)が特定された。コンピューター支援サーベイランスと文書ベースの前向きサーベイランスの一致例は、BSI 13 件(100%)、UTI 14 件(77.8%)、RTI 42 件(72.4%)であった。全体では69 件(77.5%)の感染症が一致し、κスコアは 0.74 であった。不一致の原因となったデータの記録に関する過誤の件数は、文書ベースの前向きサーベイランスでは 11 件、コンピューター支援サーベイランスでは 14 件であった。観察者間の不一致は合計 16 件発生し、その理由は感染症の基準(RTI 13 件)および感染部位(RTI 2 件、UTI 1 件)であった。コンピューター支援サーベイランスによる情報収集の所要時間は、文書ベースの前向きサーベイランスの 30%未満であった。
結論
日常的なワークフローを通じて構築したデータベースの解析によって、ICU 感染症のコンピューター支援サーベイランスは実施可能なサーベイランス手法であり、文書ベースの前向きサーベイランスとの一致は良好であることが示された。コンピューター支援サーベイランスと文書ベースの前向きサーベイランスの不一致は、主として観察者間変動によるものであった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
日本における電子カルテシステムの進歩は著しいが、いまだに満足できる感染症データベースソフトはない。これまでのサーベイランスは人的判断による部分が多く、観察者により判定が異なるため、サーベイランスには専門的判断が必要となる。継続することが困難となる原因ともなっている。一方、コンピューターデータベースによるサーベイランスは労力が少なく、その有用性が期待される。日本でも統一された電子データに基づくサーベイランスソフトが開発され、労力をかけずにできることが期待される。
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