超音波ガイド下中心静脈カテーテル挿入は血流感染と関連しない:前向き観察研究★
No association between ultrasound-guided insertion of central venous catheters and bloodstream infection: a prospective observational study
V. Cartier*, A. Haenny, C. Inan, B. Walder, W. Zingg
*University Hospitals of Geneva, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 103-108
背景
超音波ガイド下で中心静脈カテーテル(CVC)を挿入することによって、機械的合併症が減少し、挿入に要する時間が短縮するが、CVC 関連血流感染(CABSI)に対する影響については依然として異論がある。
目的
病院において超音波ガイド下 CVC 挿入が CABSI に及ぼす影響を調査すること。
方法
大学附属の 3 次医療施設で 4 年間の前向きコホート研究を実施した。麻酔科医による非トンネル型 CVC 挿入を受けた全患者を登録した。研修を受けた感染制御看護師がカテーテルサーベイランスを実施し、感染制御医師がその確認を行った。主要評価項目は米国疾病対策センター(CDC)の定義による CABSI とした。副次的評価項目は CVC 抜去後 28 日までの全原因死とした。
結果
合計で患者 2,312 例、CVC 2,483 本を解析対象とした。超音波ガイド下 CVC 挿入件数は 844 件(34.0%)であり、研究期間中にわたって有意な増加が認められた(発生率比 1.13、95%信頼区間[CI]1.11 ~ 1.15、P < 0.001)。47 件の CABSI が特定され、全発生率は 1,000 カテーテル日あたり 2.1 件であった。超音波ガイドと CABSI との間に関連は認められなかった(ハザード比 0.69、95%CI 0.36 ~ 1.30、P = 0.252)。全原因死亡率は 11.0%(2,312 例中 253 例)であり、有意な傾向や超音波ガイドとの関連は認められなかった。
結論
超音波ガイドは CABSI または死亡率に影響を及ぼさなかった。ベースライン時の CABSI 率が高所得国の現在の標準的な水準にある病院では、超音波ガイドの利用は CABSI 予防に関して追加的な有益性をもたらさない。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
外科手術では、手術時間と術後感染との間に相関がみられることが報告されている。超音波ガイド下に短時間でスムーズに挿入すれば、CABSI が減少するのではないか、というのが本研究の背景である。実はすでに超音波ガイド下の挿入により有意に CABSI が減少したというランダム化比較試験が存在する。しかしその研究ではベースラインの CABSI 発生率が 16%と極めて高かったことが問題となっている。今回の研究ではベースラインの CABSI 発生率は 1.89%と低く、それも超音波ガイド下の挿入による CABSI 発生率の有意な低下が認められなかった理由の 1 つであろう。
1 つの感染対策をとっても、その有効性は病院の状況によって異なるため、導入の是非は実際にサーベイランスを行って確認する必要がある。本研究はそのような視点の重要性をも教唆している。
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