看護師の感染制御行動の主要な促進因子である汚れと嫌悪感:解釈的な定性的研究★

2014.06.30

Dirt and disgust as key drivers in nurses’ infection control behaviours: an interpretative, qualitative study


C. Jackson*, P. Griffiths
*King’s College London, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 71-76
背景
感染予防は依然として医療システムにおける重要な課題である。しかし、感染症の伝播を減少させるために、明確な方針や科学的に証明された技術を提供するための多くの取り組みが行われているにもかかわらず、医療従事者の信念や実践は常に科学的根拠と一致しているわけではない。
目的
看護師の感染予防行動を分析し、解釈する。
方法
半構造化面接による解釈的な定性的アプローチを採用した。急性期病院に勤務する正看護師 20 名を対象として面接を実施した。フレームワーク手法を用いて分析を行った。
結果
本稿は、「汚れからの保護」という主題に焦点を当てたものである。今回の知見から、感染と汚れは明確に区別されていることが示された。汚れ、特に誰のものか不明な汚れと接触することへの恐怖は、脅威の軽減のための行動の主要な促進因子であった。その患者になじんでいる場合は、必要な防御行動は減少した。これらの行動は、まず感染予防戦略の一環として現れるものであり、一義的には、初対面の際は「汚れている」とみなした患者に対する自己防衛の一形態であった。
結論
行動は、感染への合理的な対応と必ずしも一致するわけではなく、汚れへの対応である可能性がある。科学的な知識・行動の欠如への対処を意図しただけのプログラムでは、汚れに関する現在の社会的構造と汚れによって引き起こされる対応を勘案しない限り、期待した目標に到達することは困難である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
感染予防対策のコンプライアンスの低さは感染対策に従事する人々の大きな悩みであるが、本論文で明らかになったことは「自分に対する汚染→感染への恐怖」が感染対策手技の動機となっていることであり、「自分を守る」ことが優先され、科学的根拠に基づく知識による行動ではない。本来の感染対策の目的である「患者を無用な感染から守る」ことを優先的課題として感染対策が現場で実施されるようするには、現在の研修教育と訓練とは別のアプローチを行う新たなツールの開発が必要である。
監訳者注:
半構造化面接(semi-structured interview):大まかな方向性を決めたインタビューガイドに従って質問を進めていく面接方式。対話の流れに合わせて質問を変化させることかでき、柔軟にその意見を聞き取ることが可能となる(鈴木淳子:調査的面接の技法、第 2 版、ナカニシヤ出版、京都、2005)。

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