高齢患者と医療従事者に生じたインフルエンザ A(H3N2)院内アウトブレイクの伝播経路★

2014.03.31

Routes of transmission during a nosocomial influenza A(H3N2) outbreak among geriatric patients and healthcare workers


D. Eibach*, J.-S. Casalegno, M. Bouscambert, T. Bénet, C. Regis, B. Comte, B.-A. Kim, P. Vanhems, B. Lina
*Hospices Civils de Lyon, France
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 188-193
背景
インフルエンザへの罹患は、入院中の高齢患者にとって、生命を脅かされるものである。医療従事者や他の患者、面会者によって院内で伝播するものであるが、2011 年から 2012 年にかけて、フランス・リヨンの Edouard Herriot 病院の老年病科もインフルエンザ A(H3N2)のアウトブレイクを経験した。
目的
このインフルエンザ A(H3N2)のアウトブレイク事例において、シークエンス解析を用いて伝播経路を明らかにするとともに、有効な予防策を決定すること。
方法
2012 年 2 月 19 日から 3 月 15 日の間に、老年病科の急性期病棟でインフルエンザ様症状を訴えた患者のうち、22 例が検査上インフルエンザと確認された。質問票を用いて患者および医療従事者の発生率を算出し、疫学的な関連性について解析を行った。同時に、ウイルス培養陽性検体と市中で流行していたインフルエンザの検体について、ノイラミニダーゼ遺伝子およびヘマグルチニン遺伝子の配列を決定し、クラスター解析を行うことで、同一ウイルス株が検出された患者を特定した。
結果
患者 16 例、医療従事者 6 例からウイルスが検出され、発生率はそれぞれ 24%、11%であった。院内で感染した患者は 6 例であった。シークエンス解析により、病棟の 3 つのセクションで 3 個の独立したクラスターがあったことが確認された。さらに、少なくとも 2 個のクラスターにおいて、それぞれ医療従事者 1 名が感染源であることが判明した。
結論
疫学および微生物学的解析の結果から、医療従事者から患者へのインフルエンザの伝播が確認された。今後もインフルエンザシーズンでのアウトブレイクを予防するために、ワクチン接種率の向上、隔離策の強化、および手指衛生の改善が推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
インフルエンザ流行期に、インフルエンザが病棟内で発生する事例にしばしば遭遇する。この時、考えられる経路は複数あることが多く、特定することも容易ではない。しかしながら今回の事例では、3 クラスター中 2 クラスターで医療従事者が感染源であるとみられ、医療従事者の感染予防の重要性が改めて強調された。医療従事者の感染機会を減らす努力と日常の体調管理、ワクチン接種率のさらなる向上が求められるが、超過勤務や罹患した欠勤者の代替といった現実的な問題も存在するため、流行シーズンを迎える前から発生可能性と対処法について十分に検討されるべきである。

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